ライフ 格差・貧困 人口・少子高齢化
間もなく地方都市を襲う「老朽マンション建替え」という大問題
その数、なんと20万戸超!
貞包 英之 プロフィール

明確な答えはないけれど

以上から、大都市とそうでない地域の「建替え」格差は今後ますます激しくなると予想される。

住宅需要が活発な地域では、マンションは比較的容易に建替えられたとしても、そうでない場所では建替え合意に達せないまま、経年マンションがスラム化する危険性が強いのである。

では、どうすればよいのか。残念ながら、それに明確な答えはない。

〔PHOTO〕gettyimages

準備金を積み立てるなどして、自己責任で建替えを担うことがまず当然、求められる。しかしそれは容易ではない。安値な中古で買った購入者を含め、経年マンションの多様な所有者の5分の4以上が充分な余裕を持つとは考えにくいためである。

それゆえ近年では、個別に、または都市計画を見直し容積率を引き上げ、マンションをより高層化することで、建替え資金を捻出する道が期待されている。

ただし東京でさえ人口減少が予測される社会では、それにも限界がある。建替えに合わせ規制緩和し住宅供給を増やすことは、売れ残りのリスクを拡大するだけではなく、郊外や地方に建つ経年マンションの状況をより悪化させかねないためである。

実際、経年マンションほど空き家化が目立つことが確認されている(「平成25年度マンション総合調査」)。結果、所有関係や利害関心が複雑になることで、建替え困難なマンションも増える危険性が強い。

だとすれば最終的には公的資金の導入や、新築時に一定の金額を賦課し他のマンションの建替えにあてる一種の「保険」によって、建替えや解体を賄うしかないのかもしれない。

ただしそれには公平性に問題があることに加え、マンションを新規に買う人が他のマンションの解体費用を肩代わりすることにどこまで社会的合意が得られるかという未解決の問題が残る。

戦後的居住システムの「死」

こうして解決の道筋が見出だせないまま、多くのマンションが空き家化しスラム化する危険に晒されている。

くり返せば、マンションの建替えがこれまで問題化されなかったのは、新規の住戸の増設によって建替え費用を賄うことが、基本路線とされていたためである。その意味では、各人が住戸を所有し解体にも責任を持つという戦後のマンション居住の仕組みそのものが、尽きることのない住宅需要という夢のなかで、ようやく維持されるものだったといえる。

しかし少子化や高齢化によって、まず地方から、次には東京でも、その夢から覚めようとしている。

そのはてに私たちはいかにマンションの「死」を看取るのかという困難な問題を突きつけられているのだが、マンションを買い暮らすことを一般的な選択肢としてきたこれまでの居住の可能性を掘り崩しているという意味で、その死は個別のマンションのみならず、戦後の居住システムそのものの「死」に通じているのかもしれない。