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間もなく地方都市を襲う「老朽マンション建替え」という大問題
その数、なんと20万戸超!
貞包 英之 プロフィール

調査から見えてくること

地方のマンションの建替えが困難になる現実は、筆者が今年参加した調査(花里俊廣代表「マンション建替え意向調査」)からも確認された。

築25年以上のマンションの居住者856人に対してネットを通してアンケートしたところ、まず東京圏と大阪圏とそれ以外の地方圏(名古屋圏は1件のため議論から省く)を較べると、建替えに対して賛意を寄せる人が東京圏で統計的に有意に多かった(33.2%)状況が浮かび上がる。

こうした事態は、地方に対する東京圏の住宅需要の活発さからひとつに説明される。みてきたように、新設した住戸が高く売れる期待が大きいほど、マンションの建替えは容易になり、賛意も多くなるはずだからである。

たしかに大阪圏(23.3%)では地方圏(23.1%)と賛意はほとんど変わらず、反対はむしろ多くなることには留意する必要がある。

ここから大阪では地方同様に住宅需要が厳しいとみることもできるが、それ以上に注目されるのが、地方圏では「どちらともいえない」という選択が目立つことである。これは地方圏では建替えがそもそも現実的ではなく、それゆえしばしば安易に見積もられていることを推測させる。

実際、統計的には有意ではないが、東京圏や大阪圏では建替えがそれぞれ21.8%と22.7%、とにかく議論されていたのに対し、地方圏では14.1%しか議論されていなかった。ここから地方圏では、建替えの困難さのために、真剣な議論にさえ辿り着けていない状況が浮かび上がる。

〔PHOTO〕gettyimages

地方でのこうした建替えの困難さを別の角度から示すのが、移動可能性と建替え賛意のリンクである。

まず総体の結果を示せば、現在のマンションから引っ越してもよいと答えた居住者は、建替えに賛成する確率が有意に高かった(23.9%に対し34.1%)。

建替え後のマンション、またはその前に引き換えの権利を売り出て行けば、仮住まいの煩わしさや煩瑣な折衝は回避できる。その意味で、引っ越しという選択肢をもつ人が、建替えに合意しやすいことは頷ける。

ただしより詳しくみると、大都市、それも東京都ではこの結果は妥当するが、地方圏ではそうではなかったことが興味ぶかい。東京都では移動を受け入れる人は建替え賛成が40.9%、そうでない人は26.5%と差があったのに対して、地方圏では有意なちがいはみられなかったのである。

これは先にみたように、東京で建替えをしたマンションが高く売れることが期待されるのに対し、地方ではそうでないことが影響していると考えられる。

東京では建替えによって価値の上がったマンションを売却して、より郊外や地方に移動して豊かな生活を送るという選択肢が充分現実的である。

対して地方では、①マンションがそもそも高値で売れず、②またより安い住宅もみつけにくい。農山漁村地域に移動するなら別だが、マンションの多くが立地する地方都市と同等の環境にこだわれば、住戸は今と較べ格段に安くはならず、にもかかわらず地方の移動希望者の多くが地方都市部に住むことを望んでいる(「平成27年 国土形成の推進に関する世論調査」)。

こうした二重の制約のせいで、引っ越しの可能性が建替え賛意を増やすことは少ないのである。