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間もなく地方都市を襲う「老朽マンション建替え」という大問題
その数、なんと20万戸超!

多くのマンションが直面する「建替え問題」

私たちの社会は、よくいえば楽観的、悪くいえば先を真剣に見通す力に欠けているようだ。たとえば年金運用や人口減少など、深刻な事態に陥ることがとっくに予見されていながらも、有効な対処はいつも遅れてきた。

マンションの老朽化に関しても同じである。永久に建つマンションはない。1960年代に分譲ブームが始まって以降、いずれ建替えか解体かが迫られることは明白だった。しかしそのための抜本的な解決の仕組みは作られず、そのせいで結果として多くのマンションが、先行き不透明な状態に置かれている。

国土交通省によれば、2015年末で全国のマンションストックは623万3000戸。そのうち35年以上経過し、また旧来の耐震基準に従い早急な対処が必要とされる1980年以前に建てられたマンションは、94万3000戸にのぼる。

とはいえマンション建替えや解体は、容易ではない。それを行うには、マンションの区分所有者の5分の4以上の合意が必要になるからである。

これまでマンションは、近所付き合いに気兼ねなく、気楽に住める都市的住まいとして好まれてきた。しかしその特徴が、建替えや解体には不利に働く。多様な人びとが所有し暮らすせいで、建替えや解体の合意形成がむずかしいためである。

それでもマンションの老朽化が真剣に問題とならなかったのは、ひとつには永住意識が高くなかったためである。土地がますます高騰するなかで、マンションを売り、いずれ庭付き一戸建てに引っ越すという選択を夢みる者も多かった。

しかし土地神話が崩壊した今、人びとはマンションの行く末に正面から向き合わざるをえなくなっている。

近年、高齢化にも伴いマンションを「終の棲家」とみる居住者が増えている(「平成25年度マンション総合調査」)。そのなかでマンションの老朽化は避けられない問題として意識され始めているのである。

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地方で建替えがむずかしい状況

こうした状況がとくにひどい、またはひどくなると予想されるのが、地方である。

マンション再生協議会によれば、2016年現在まで総計311件の建替えが実現、または実行中だが、そのうち東京都で155件、大阪府で41件など、東京圏(東京都、埼玉県、神奈川県)・大阪圏(大阪府、兵庫県)・名古屋圏(愛知県)で89.2%を占めるのに対して、地方では25件と少ない。

さらにその内訳も、札幌市7件、福岡市5件など大都市に集中し、それらを除く中小都市では数えるばかりしか建替えは実現されていない。

地方で建替えが少ないのは、ひとつにはそもそも地方に経年マンションが少ないからである。平成25年住宅・土地統計調査でみれば、1980年以前に作られたマンション(ここでは共同住宅、持ち家、三階以上、非木造)の87.6%は、東京・大阪・名古屋圏に集中している。

とはいえ地方に経年マンションが全くないわけではない。たとえば1981年から1990年までに建設された次の建替え予備軍をみれば、全体の20.3%、20万7000戸が地方圏に位置している。

1981年の耐震基準の改定によって改善されているとはいえ、遅かれ早かれそれらのマンションも老朽化することに変りはない。にもかかわらずロールモデルがないことで、地方のマンションの建替えはいずれ大きな問題とならざるをえないのである。