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歴史
国家公務員の「鵜飼」がいるってご存知ですか? しかも世襲制…
給料は月にわずか8000円!?

1300年前から続く伝統漁

「おもしろうて やがてかなしき 鵜舟かな」とは松尾芭蕉の句。金華山とその山頂に佇む岐阜城を背景に、長良川の川面に揺れる篝火――。

織田信長や徳川家康といった時の権力者たちや「喜劇王」チャールズ・チャップリンが絶賛した岐阜の伝統行事、「鵜飼」。

そもそも鵜飼とは、溯ること約1300年前から続く伝統的な鮎漁で、船上から松明の火でおびき寄せた鮎を、紐を括りつけた鵜に捕らえさせるというもの。そのため漁を行う鵜匠たちには熟練の技術が求められる。

そんな仕事をこなしているのが、実は国家公務員であることはあまり知られていない。しかも、愛知県や京都府など鵜飼を行っている地域は数ヵ所あるにもかかわらず、唯一長良川の鵜匠だけが国家公務員なのである。

 

長良川の鵜匠だけがこれほどまで重宝されるのは、1000年以上昔の律令時代に鵜匠が宮廷直属の官吏として漁をしていたことに由来する。

明治維新によって日本が一気に西洋化し、存続の危機に瀕した際も、皇室とのつながりを重んじた政府が、長良川に3ヵ所の御料場を設置し、鵜匠の保護を決めたという。

そんな経緯で急に政府の雇われ職員となった彼らの正式名称は、「宮内庁式部職鵜匠」。なぜ宮内庁かといえば、皇居に献上する鮎を獲るための「御料鵜飼」を行うからなのだという。御料鵜飼は年8回行われるが、天皇・皇族はもちろん、駐日外国大使らに獲った鮎が供されたりもするため、責任は大きい。

現在、長良川の鵜匠たちは全部で9名。みな男性のみの世襲制となっているところが、普通の公務員との大きな違いだ。

また鵜飼の期間は毎年5月11日から10月15日と定められているため、仕事のない冬の時期などは教師や喫茶店を経営したりと、“本業”とは別の職につくこともできる。

ちなみに、気になる鵜匠のお給料だが、国からは月8000円ほどしかもらえない。その代わり、岐阜市からは船頭を雇用するための報償費として、一人年間約2900万円を受け取っている。(栗)

週刊現代』2016年12月31日・2017年1月7日号より