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エンタメ

スター・ウォーズ『ローグ・ワン』が成し遂げた驚くべき「創造」

「たった1行」の文章が壮大な映画に

結末を知っていて見る物語

歴史上の大事件を描く映画やテレビドラマ、演劇の場合(小説やコミックも同じだが)、観客は結末を知った上で見に行く。

今年の大河ドラマ『真田丸』も、視聴者のほとんどは、豊臣側が敗北し、大阪城が炎上し真田幸村が死ぬのを知った上で見ていたはずだ。豊臣と徳川のどちらが勝つんだろうとハラハラドキドキして見ていた人は、よほど歴史を知らない人だ。

映画やドラマを見るのは、別に「結末」を知りたいからではない。

映画のなかには、結末が分かっていても面白いものがたくさんあるのだ。

* * *

話題のアニメ映画『この世界の片隅に』も、見に行った人の大半は、物語のある時点で広島に原爆が落ち、8月15日に玉音放送があって日本の敗北で戦争が終わることを知っていて見ているはずだ。

このアニメ映画においては、原爆が落ちるのも敗戦も、「意外なストーリー展開」でもなければ、「知られざる歴史の秘話」でもない。

主人公のすずは何も知らないけれど、観客は「神の視点」で見ており、何が彼女を待ち受けているのかを知っている。知らないのは、原爆や敗戦が「どのように」彼女の人生に影響を与えるかだ。

映画『この世界の片隅に』公式HPより

16日に公開された『スター・ウォーズ』の外伝(スピンオフ)作品、『ローグ・ワン』もまた、「周知の歴史」のなかの「結末が知られている」物語として作られている。

2作とも、歴史の表舞台には出ることのなかった女性を主人公にしている点でも共通する。

これは、たまたまこの2作を同じ日に続けて見たので、こじつけてみたに過ぎない。
別に世界中で、戦争の歴史の表舞台に出ることのなかった女性を描く映画がブームになっているわけではない。

それにこの2作はまるで違う。

かたや、現実にあった戦争を背景に、戦場とはかけ離れた平和な町で暮らしていた女性が、戦況が悪化して空襲の被害にあって負傷し、敗戦を迎えるなかで、自分の居場所がどこかを自問自答し、結論を出す自分探しと成長の物語。

もうひとつは架空の戦争のなかで、運命の糸に操られてはいるものの、自分の意思で積極的に戦闘に参加した女性が、不可能に近いミッションに挑んでいく、任務完遂の物語だ。

こういうまったく異なる映画が同時期に公開されているのが、2016年12月の日本だったと、とりあえず記録しておきたい。

 

数十億人が共有している「架空の歴史」

『ローグ・ワン』の歴史は架空のものだが、いまや数十億人が共有している「歴史」でもある。

地球規模では、「大阪夏の陣」を知っている人よりも、『スター・ウォーズ』の帝国軍と反乱軍との戦いを知っている人のほうが、はるかに多いだろう。

もしかしたら、日本国内においても、そうかもしれない。それくらい、『スター・ウォーズ』世界は、身近になっている。

『ローグ・ワン』は、その架空の歴史のなかで、これまでたった1行ですまされていた物語に注目し、それを詳しく描いたものだ。