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佐藤優が教える「トランプが8年前に語っていた本心」

上っ面を見ているだけでは理解できない

上っ面だけを見てはいけない

11月8日の米大統領選挙で共和党のドナルド・トランプ候補が当選したことに世界中がショックを受けている。既存の国際秩序が続いた方がいいと考える日本、EU(欧州連合)、オーストラリアなどは、民主党のクリントン候補が当選することを望んでいたので、トランプの否定的側面だけを見ていた。そのような認識は間違いだ。

トランプは、ビジネス本の分野でのベストセラー作家だった。ロバート・キヨサキとの共著『あなたに金持ちになってほしい』を読むとトランプがビジネスの世界で「自分を表現する」ことに特別の価値観を認めている人物であることがわかる。

 

〈私も耳にしたことがあるが、従業員なのに「まるで会社が自分のものであるかのような働きぶりだ」と評判の立つ人がいる。自分が会社のオーナーであるかのように、その成功を唯一の目的に一途に働く人たちだ。自分のビジネスを持ちたいと思ったら、一つの目的に向かって献身することが必要だ。例えば、ビジネスオーナーには労働時間に制限はない。何日も休まずに働くことさえある。それに、最終的な責任はすべてオーナーにかかってくる。

私はそういう責任を負うのが好きだ。自信が湧いてくるからだ。疲れるどころか、エネルギーを与えてくれる。そういうプレッシャーを楽しめないという人もいるが、そういう人は従業員のままでいた方がいい。

もちろん、自分のビジネスを持つことには、誰の目にも明らかなご褒美がついてくる。それは説明するまでもないだろう。一度自分のビジネスを持つと、他人のために働く生活に戻るのはむずかしくなる。どう考えてみても、この二つの世界は違う。

だからこそ、自分の船の船長であり続けるために、あれほど一生懸命に働こうという気にもなるのだ。自分のビジネスを持てば、あなたは毎日自分に向かってこんなふうに言うことができる。「すべては私から始まる―今、ここで、今日!」これは実にすばらしい気分だ。

自分のビジネスを持つのは木を育てるようなものだ。ビジネスも季節の変化や嵐を乗り越え、美しい夏の日や冬の猛吹雪を経験して生きる生命体だ。それは成長を続けるものであり、文字通り自分自身を表現するものでもある。私が、自分のやることの品質管理に細心の注意を払っている理由の一つがここにある。

自分を表現するものが何かあったら、自分の知るかぎり、あるいは達成できるかぎりそれを最良のものにしておきたい。そうすれば、自分に対するハードルをどんどん高くすることができるし、決して退屈しなくてすむ。そのことは保証してもいい〉

トランプにとって勤勉はとても重要な価値なのである。ビジネスの目的は、金を稼ぐことではなく、「木を育てる」ようなものなのである。金はその結果としてついてくるのだ。これは典型的なピューリタニズムの原理だ。3度の結婚、派手な女性関係、贅沢な生活などは、トランプの上っ面で、本質はとても真面目で仕事を通じて社会に貢献したいという信念を持っている人物なのだと思う。