金融・投資・マーケット 週刊現代

ああ、相続で銀行員にダマされた!【怒りの実例集】

いまや揉めるのは身内ではなく銀行員

相続で揉めるのは身内と相場が決まっていた。だが近年、その相続の場で銀行員がトラブルを起こしているという。アコギな金融商品を売りつけて、手数料を荒稼ぎ。その驚愕の実態をリポートする。

霊柩車を追いかけろ!

銀行の支店にいる営業マンの朝は、新聞に掲載された訃報に目を通すことから始まる。取引先の不幸に同情して、お悔やみを伝えるためだけではない。新聞に訃報が載る名士の場合、まとまった額の資産を相続する遺族が存在するからだ。

「外回りの最中に町で霊柩車を見かけたら、ついていくこともあります。亡くなられた方の名前と住所を確認し、お通夜、葬儀に顔を出し、お悔やみに伺う。

もちろん、名刺と営業用の商品パンフレットを持って。当日は取り込んでいますから、その日はすぐに失礼しますが、四十九日の法要が終わった頃を見計らって、再び自宅を訪ね、相続に関する営業をかけるのです」(元大手銀行員)

銀行員は相続した遺産を自行に預けてもらい、預金額を増やしたいわけではない。肉親を失って心にぽっかり穴が空いたり、冷静な判断ができなくなったりしているところに、金融商品を売りつけて手数料を稼ぐのが本当の目的だ。

 

本来、銀行は預金を集め、それを融資して、金利を得ることで稼いできた。だが、現在の銀行はそんなビジネスモデルとは程遠いと、金融商品に詳しい弁護士の本杉明義氏は話す。

「銀行が販売する金融商品でトラブルが後を絶たない最大の原因は、銀行が手数料ビジネスに大きく舵を切ったことが挙げられます。メガバンクなどは手数料が稼げるという理由から、かつては考えられなかったようなリスクの高い商品を販売するようになっています。

しかし、金融知識の豊富な人や判断力の高い人は、銀行に勧められても簡単にはリスクの高い商品を購入しないので、銀行は高齢者や金融知識の乏しい人にリスクの高い商品を推奨する傾向があります。たとえば、相続で思わぬ大金を手にした遺族や、夫を亡くしたりして一人暮しをしている高齢の女性などは被害に遭いやすいですね」

例えばこんな具合だ。

神奈川県に住む小島薫子さん(67歳・仮名)は、7歳年上で元会社役員の夫を亡くした。遺産分割協議書を銀行に持っていき、亡くなった夫名義の銀行預金を妻名義の口座に振り替えた。相続した現金は約3000万円。翌日、その銀行の営業担当が自宅を訪ねてきた。

「奥様名義の預金残高が大きくなりましたが、これはどのように運用するご予定ですか」

薫子さんは運用など考えておらず、定期預金にでもするつもりだった。そう告げたが、銀行員は一歩も引かない。

「今は預金では利息も付きませんし、奥様がこれから長生きをされますと、必要なおカネは増えます。何かで運用しないと、年を取ってから、お子様に迷惑をかけることになりかねませんよ」

「皆さん買ってますよ」

銀行員は、国内外の株や債券で運用する投資信託と、一時払いの外貨建て変額個人年金を勧めてきた。それまで投資や運用の経験がない薫子さんは商品の内容をほとんど理解できなかったため、

「自分には何がなんだかわからない。損をすることはないのか」

と尋ねると、銀行員は、

「この投資信託は、過去の利回りが年利5%以上なんです」

と繰り返し強調し、個人年金については、

「5年間据え置き型の個人年金保険は、5年満期の定期預金のようなものです。定期預金の場合は、今の低金利では預けた額とほとんど変わりませんが、こちらは十分に増える可能性があります」

と説明。話がうますぎる気がしたが、迷う薫子さんに銀行員はこう畳みかけた。

「預金と違ってリスクはありますが、多くのお客様がこの商品を買っていますし、うちの銀行では売れ筋の商品なんです」

それを聞いた薫子さんはみんなが買っているなら安心だろうと思って、それぞれの申込書類にサインをした。ファイナンシャルアソシエイツ代表の藤井泰輔氏は、銀行の勧める投資信託を買うべきではないと断言する。

「販売実績やこれまでの利回りを強調する投資信託には要注意です。過去の実績は将来の利回りを保証するものではありません。最近は円安になっているので、銀行は外貨建ての投資信託を勧める傾向にありますが、今後、反転して円高になる可能性は十分にある。そのときは為替と価格変動のダブルリスクがあることを肝に銘じてください」

そもそも、銀行が勧める投資信託は手数料が高すぎる。ファイナンシャルプランナーの紀平正幸氏が解説する。

「海外で運用する投資信託は、国内の株や債券だけで運用する投資信託に比べて、手数料が非常に高い。販売手数料は3%以上で、それ以外に信託報酬が毎年2%もかかる。これだけのコストを差し引いて、安定的に運用益を出せる可能性は少ないでしょう」

また、一時払いの外貨建て変額個人年金保険も、「年金保険」という名前とは裏腹に、遺された人間の老後資産として相応しい金融商品ではないと紀平氏は言う。

「販売時にかかる手数料が7%で、運用期間中も1・5~2%の運用手数料を取られます。これは5年間で計15%程度の手数料がかかる計算です。しかも、5年以内に解約すると、8%程度を別に取られるペナルティもあります。

相続した人が病気になった場合など、一時的にまとまった現金が必要になる可能性もありますが、そうした時に解約すると損が出る可能性が高い。こういった商品を『定期預金のようなもの』と説明することは悪質です。

定期預金は絶対に元本割れをしないのですから。夫を亡くした女性が、これだけリスクの高い金融商品で運用しなければいけない理由はどこにもありません」

 

結局、薫子さんの虎の子の3000万円は、わずか2年間で1000万円以上の含み損を抱えるようになってしまった。異変に気づいた息子が、リスクの高い商品をすべて解約。弁護士を通じて銀行に損害の賠償をするように交渉した結果、和解が成立し、損失の8割を取り戻したという。

Photo by iStock
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