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ソフトバンク孫正義がトランプに会いに行った「本当の理由」
プレゼン資料にはあの企業の名前が…

ソフトバンクの孫正義社長がトランプ米次期大統領と会談を行い、米国への巨額投資と雇用創出について確約した。

孫氏の行動はいつも電光石火であり、多くの人がその真意をはかりかねている。

だが、彼の一連の行動を、ひとつの文脈で読み解けば、背後にある一貫性を理解することができる。

資料の中にあった企業名

孫氏は12月6日、トランプ次期大統領と会談を行った。場所はトランプ氏の自宅があるマンハッタンのトランプタワーで、ここは安倍首相がトランプ氏と会談した場所でもある。

孫氏は総額で500億ドル(約5兆7000億円)を米国に投資し、5万人の雇用を生みだすとトランプ氏に確約した。

トランプ氏は、孫氏の提案に上機嫌だったようで、約45分の会談の後、孫氏をわざわざロビーまで見送り、「彼は米国への投資を決断してくれた」「偉大な人物だ」と孫氏を賞賛。孫氏も「積極的に米国に投資していきたい」と語った。

 

孫氏は投資の具体的な中身には触れなかったが、スタートアップ企業について言及したことを考えると、10月に設立を発表した10兆円ファンドを活用し、米国のベンチャー企業に投資を行うものと考えられる。

ただ市場では金額が5兆円と大きいことから、ベンチャー企業への投資に加え、一度は断念した米国の通信会社買収に再び乗り出すのではないかとの観測も高まっている。

だが筆者は、こうした具体的な投資案件のみならず、孫氏はもっと大きなスケールで今回の会談に臨んだ可能性が高いとみている。

それは、アップルとトランプ氏の橋渡しを通じた米国社会におけるプレゼンス拡大である。ヒントになるのは台湾の鴻海精密工業である。

今回、孫氏がトランプ氏に提示したプレゼン資料の中にはソフトバンクの社名と共に、FOXCONNという文字が記されていた。FOXCONNはシャープを買収した台湾の巨大企業・鴻海精密工業のブランド名である。

つまり孫氏は米国の投資を鴻海と共同で実施するとトランプ氏にプレゼンしたわけである。孫氏が今回の会談でわざわざ鴻海の名前を出した狙いはどこにあるのだろうか。

孫正義氏の手元には「FOXCONN」と書かれた書類が。 Photo by GettyImages

真の狙いはトランプ氏とアップルの仲介?

鴻海は中国本土に巨大な工場をいくつも所有する台湾有数のメーカーであり、アップルのiPhone製造を一手に担っている。経営が傾いたシャープを鴻海がわざわざ救済したのは、液晶の生産能力を拡大し、アップルとの取引を確実なものにするためである。

大口顧客との関係強化のためにシャープ1社を丸ごと買ってしまうというのが今の鴻海流だ。こうしたことからもアップルと鴻海はもはや切っても切れない関係にあることがよく分かる。

トランプ氏は選挙期間中、アップルによる生産の外部委託について取り上げ、国内で製造すべきだと強く批判してきた。だがアップルが鴻海への製造委託を全面的に取りやめることは現実的に困難であり、トランプ政権とは何らかの妥協が必要な状況となっている。

ここで有利な立ち位置にいたのがソフトバンクである。