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野球
前田健太が「最強のメジャー投手」になるためにあと一つ足りないもの
日本人選手の本当の評価

今季、メジャーで活躍した前田健太選手。ルーキーイヤーながら16勝を挙げ、ポストシーズン進出の原動力となりました。さらなる飛躍を来季、果たすには何が必要なのか。

また、1990年代後半から毎年のように侍メジャーリーガーは誕生してきましたが、20年を通して日本人選手の株は上がっているのでしょうか。元メジャーリーガー長谷川滋利さんが解説します。

前田健太「こうすればさらに評価が上がる」

2016年の野球シーズンも終わり、アメリカでも連日、移籍や契約情報が紙面を賑わしています。

今季の日本人メジャーリーガーでいえばやはり前田健太選手(ロサンゼルス・ドジャース)の活躍が目立ちました。ルーキーイヤーで16勝11敗、防御率3.48という結果は十分すぎる成績と言っていいでしょう。

ドジャースは前田投手を2番手、あるいは3番手のスターターとして開幕を迎えましたが、ケガ人が増えて、1年を通してローテーションを守ったのはほとんど彼ひとりでした。そこも大きく評価できる点ですね。

 

ただ、欲をいえばもう少しイニングを稼いでほしかったですね。アメリカは勝敗や防御率よりイニング数で評価をされるケースが非常に多いです。今年は1年目なので、様子見という意味でも中5日での登板が多く仕方ない部分もありますが、十分な結果を残したので、来季はメジャーでは当然の中4日での登板が増えるはずです。

そこで来季も同様のパフォーマンスができるかが、目標と課題になってくるでしょう。シーズン200イニングはひとつの目安なので、そこを目指してほしいですね。

達成するには、やはり球数を意識的に減らしていくこと。ローテーションピッチャーは80球から110球までの球数で、悪くても6回、良ければ8回までゲームを作ってほしい。というのがメジャーの考えた方です。最近は日本もこれに近い感じになってきましたね。

その制限がある中で、効率良くアウトを重ねるには、打たせて取るのが理想です。

前田投手はシーズン途中から「打たれないと思った球を何度か打たれた」といったコメントを出していましたが、やはりメジャーのバッターの水準は高いです。彼はカープ時代の8シーズンで97本しかホームランを打たれていませんが、メジャー初年で20本を浴びるという数字も残りました。

「三振を捨てる」という発想

そこでどう抑えるか。ダルビッシュ(有/テキサス・レンジャース)のように確実に空振りをとれる球を持っているのであればいいのですが、日本では有効だった、大きく縦に割れるカーブでなかなかカウントを整えることができなかった。

現実的には「三振を捨てる」とまで言うと大袈裟ですが、バットに当てられることを怖がらずに内野ゴロ、あるいはポップアップ(フライ)を打たせるピッチングを目指すというプランがあります。

「The Professor」の異名を持ち、通算355勝を挙げたグレッグ・マダックス(現レンジャーズでGM補佐)は、よく「究極の投球は27球でゲームを終わらせること」と言っていましたが、とにかくムダな球を減らすことが求められます。

前述したカーブでカウントを取るためには、例えば高め、あるいはコーナーにコントロールしたまっすぐを見せないといけない。ここ一番のピッチングならまだしも、1ストライクをとるために2球を消費する投球は効率が良くありません。

メンタル面で参考になるのは、黒田博樹投手(今季で引退)かもしれません。前田投手とは少しタイプは違いますが、彼が使うバックドアと呼ばれるボールからストライクになる2シームが大きな武器になりました。見逃しのストライクをとれる球であり、もし当てられてもゴロが多かった。

もちろんメジャーのバッターはパワーがあるので、打たれることはあります。でもシングルを打たれても結果的にはフォアボールと同じですし、仮にホームランを打たれても極端な話「ソロなら、ま、ええか」といったある意味での開き直りを持っていた。

黒田投手本人に確認したことはないですが、メジャーのピッチャーはそのたぐいの開き直りや覚悟は共通して持っているとは思います。極端な話、6回までに3本のソロを浴びてもOKですから。