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文学
ボブ・ディランの詩はここがすごい! 難解だなんてウソです
極私的ディラン耽溺記

ノーベル文学賞を受賞したボブ・ディラン。その詩はしばしば「難解」と形容される。しかし、それは違うのだ。ひたすらディランを聴き込んできたコラムニスト・堀井憲一郎さんが彼の詩の魅力をわかりやすく説く。

吉田拓郎の影響で

ノーベル文学賞の授賞式で、ボブ・ディラン代理の歌手が『ハード・レイン/はげしい雨が降る』を歌った。

1963年の歌だ。

ボブ・ディランの代表作である。

ノーベル賞によって、注目されるようになったボブ・ディランだが、もっとも有名な曲は『風に吹かれて』だろう。ディラン受賞ニュースで流れていた音楽はだいたい『風に吹かれて』だった。あとは『はげしい雨が降る』と『ライク・ア・ローリングストーン』もニュースで流れていた。『時代は変る』も聞いた気がする。それがほぼ全部だ。

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私がボブ・ディランを聞くようになったのは、吉田拓郎の影響である。

1972年に颯爽と現れたフォーク界の貴公子・吉田拓郎が、機会あるごとに「もっとも影響を受けたのはボブ・ディランである」「ボブ・ディランはすごい」と繰り返し発言していた。中学生だった私はすぐさまレコードを買いにいった。そのまま聞き続けた。

その2、3年後だったとおもう。ボブ・ディランを聞き続けていた大人が(音楽評論家だったような気がするが、詳しくは覚えていない)、「ボブ・ディランのアルバムは、発売されるごとにリアルタイムで聴いていないと意味がない」ということを書いていた。その時代に居合わせなかった者にとって、とても口惜しい発言である。

だったら、時代を越えても、似たような追体験をすればいいのだろう、と考えた。

ファーストアルバムからきちんと聴いた。一曲ずつ、歌詞カードで英語を追い、訳詩を読む。それぞれの曲をほぼ口ずさめるくらい繰り返し聞く。

ひとつのアルバムを繰り返し2、3ヵ月、ずっと聞き続ける。英語の歌詞を聴いただけで、内容がわかるようになって、次のアルバムに進む。それを繰り返した。

 

1stアルバム【ボブ・ディラン】から始まり、2【フリーホイーリン・ボブ・ディラン】、3【時代は変る】、4【アナザーサイド・オブ・ボブ・ディラン】、5【ブリンギング・イット・オールバック・ホーム】、6【追憶のハイウエイ61】。

高校生の終わりころから聞き込んで、このあたりで10代が終わってしまった。

その後、中断を越えて、7【ブロンド・オン・ブロンド】、8【ジョンウェズリー・ハーディング】、9【ナッシュビル・スカイライン】まで深く聴いた。

この9枚のアルバムで収録されている曲は103曲である。1960年代に披露されていたディランの歌である(ディラン作詞でない曲も含まれている)。

この中で、いくつか私個人に突き刺さってきた詩を紹介したい。

ただ、かなり異様な聴き方をしてきたので、バランスがとれているかどうか、自信はない。評判の芳しくないものも紹介しそうであるが、まあ、しかたない。