野球
石川・渡辺正人監督「オリックス育成4位・坂本一将は“持っている”」

今年のNPBドラフト会議で、安江嘉純、大村孟、坂本一将の3選手が指名されました。

2015年10月、石川ミリオンスターズの監督に就任し、選手たちのプレーを初めて見た時に、プロ入りの可能性がある選手を何人かピックアップしていました。もちろん3人も候補選手の中に入っていたので、もともとプロに行ける素質は十分あったと思います。

千葉ロッテに育成1位で指名された安江は、波が少ないピッチャーです。球速、球のキレ、変化球のコントロールなど、どれを取っても総合的にプロで通用する能力を持っています。何よりも素晴らしいのは、修正能力が高い。調子が悪い時でも、きちんとゲームを作ってくれました。それが今季16勝(1敗)という好成績をもたらしたのでしょう。

彼は体格にも恵まれています。身長185センチで手足が長い。手足の長さは、いいピッチャーの特徴です。手足が長いと角度のあるボールを投げられるので、バッターにとっては打ちにくいと思いますよ。

また、ピッチャーは2つのタイプに分けることができます。ひとつはピッチャーとしての役割だけを果たす選手。もうひとつは投げるだけでなく、守備やバッティングなど何をやらせても巧い選手です。安江は後者です。能力と野球のセンスは高いと思うので、まずは2軍のローテーションを守って、1年目に支配下登録をもぎ取ってほしいです。それぐらいの実力はあると思っています。

ヤクルト育成1位・大村、肩の強さはピカイチ

東京ヤクルトに育成1位で指名された大村を初めて見た時に、肩の強さとバッティングに目を引かれました。ホームからセカンドまでの送球タイムは1.8秒。ちなみに、中日で活躍した谷繁元信さんは常時1.8秒台でした。大村は谷繁さんと同じタイムを連発していたので、“これはプロに行ける可能性が高いな”と直感しました。

打撃成績は、今季67試合に出場して、打率.286、2本塁打、33打点を記録しました。本来であれば首位打者争いや2桁ホームランを狙える才能を持っているので、数字的には少々物足りなさを感じます。しかし、今季の終盤はクリーンアップとして、ランナーを還す役割をきちんと果たしてくれました。

大村の課題はリードです。彼は頭が良いので、選手の情報や試合の傾向などは頭に入っています。シーズン終盤は、そのデータ通りに攻めて相手に読まれてしまうことがありました。今後は打者の反応を見て配球を組み立てることができれば、更に良くなると思います。配球はこれから勉強し直すと思うので、バッターや状況に応じた配球を学んでいって欲しいです。

バッティングを変えることがプロへの近道

オリックスに育成4位で指名された坂本は、浦和学院-東洋大-セガサミーを経て今季石川に入団しました。社会人野球の強豪・セガサミーを辞めてまで、「プロに行きたい」と言って入団してきた選手だったので、何とかプロに送りたいという思いが一番強かった選手です。

これまで強いチームでプレーしていたので、守備とスピードはプロレベルでした。ただひとつ、欠点はバッティングにありました。身長162センチと小柄な左打者です。長打を狙うというよりも、どちらかと言うと、三遊間に転がして、足を生かして出塁するタイプでした。

しかし、プロに入るためにはバッティングを変えることが一番の近道でした。僕は「しっかり振って、長打を打てるバッターになれ」と、彼がこれまでやってきたこととは全く逆のことを言いました。最初は戸惑ったようですが、試行錯誤を重ねた末、バッティングは徐々に改善され、今季71試合に出場して、打率.305、93安打と好成績をマークしました。

技術はもちろんですが、彼の魅力はチームにいい影響力を与える“ヒューマンパワー”を持っていることです。今季を振り返ると、最終回に坂本の出塁からサヨナラ勝ちに繋がることもありました。チャンスの場面で打席に入れば、結果を残してくれました。

彼は俗に言う“何か持っている選手”です。僕がロッテ時代に一緒にプレーした西岡剛と似ています。良くも悪くもチームに影響を与える選手は、そう現れません。彼のオリックスでの活躍が楽しみです。

そして彼の練習に取り組む姿勢は、若い選手にとっていい手本になったと思います。そういう意味でも、彼のチームへの貢献度は計り知れません。今季、もし坂本がいなかったら……。そう考えるだけでもゾッとしてしまいます(笑)。

NPBで新たなスタートを切る3選手の応援をこれからも宜しくお願いします!

渡辺正人(わたなべ・まさと)プロフィール>:石川ミリオンスターズ監督
1979年4月3日、大阪府出身。上宮高から98年ドラフト1位で千葉ロッテに入団。4年目の01年に一軍初出場、初安打を記録。翌年から一軍に定着すると、自身最多の106試合に出場した。03年は主に守備固めとして、2年連続100試合(104)に出場。05年の日本シリーズでは、第1戦で先発起用されると攻守にわたって活躍し、チームの31年ぶりの日本一に貢献した。13年からはBCリーグの信濃グランセローズに守備・走塁コーチ兼任選手として入団。14年のシーズン中にコーチ専任になる。15年にヘッドコーチとして石川に入団。15年10月、監督に就任した。NPBでの通算成績は492試合140安打、打率.207、11本塁打、71打点。