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紅白歌合戦 極秘の「選出基準」に迫る

「ザ芸能界 TVが映さない真実」第8回

時代が変わっても、なお存在感と視聴率を誇る日本の看板番組。しかし、今年は波乱が起きた。当事者の証言から、華やかな舞台に隠された、NHKスタッフと芸能界それぞれの思惑を読み解く。(連載「ザ芸能界」第1回はこちら http://gendai.ismedia.jp/articles/-/49869

なぜ大物が落ちたのか

和田アキ子、細川たかし、藤あや子――。

先日発表された、「第67回 NHK紅白歌合戦」の出場者から落選した大物歌手たちである。

一方、宇多田ヒカル、PUFFY、大竹しのぶなどが初出場となった。今年活動を再開した宇多田はともかく、ここ数年目立っていなかったPUFFY、歌手としての実績が少ない大竹は意外な選出だった。

毎年話題になるのは、日本で最も注目を集めるこの国民的歌番組が、どのように出場者を選んでいるのかということだ。紅白チーフプロデューサー(CP)の権限はどれほどなのか。芸能プロダクションの影響力はどの程度あるのか――今回は、けっして詳らかにされることのない、その内情に迫ってみたい。

まず、筆者はNHK広報部に質問状を送った。以下は紅白の「選出基準」についての、NHKからの公式回答である。

〈選考に関しては、例年通り「今年の活躍」、「世論の支持」、「番組の企画・演出」、以上3つの点を中心に下記のデータを参考資料として総合的に判断致しました〉

「参考資料」は以下の6点。

(A)7歳以上の全国5000人を対象にNHKが行った「ランダムデジットダイヤリング」方式による調査の結果(※質問は、「紅白に出場してほしい歌手男女各3組」)

(B)7歳以上の全国8000人を対象にNHKが行ったウェブアンケート調査の結果(質問はAと同じ)

(C)「NHKのど自慢」の予選出場者の曲目

(D)CD・カセット・DVDの売り上げ

(E)有線・カラオケのリクエスト等についての調査

(F)インターネットやダウンロード等についての調査

ランダムデジットダイヤリング(RDD)方式とは、コンピューターで無作為に数字を組み合わせた番号に電話をかけ、調査を行うアンケート手法で、新聞社の世論調査にも使用されている。

「NHKのど自慢」の曲目が参考にされている、というのは意外だが、あくまでアンケート結果や売り上げデータなどの「数値」を最重要視したうえで、その年の演出を加味して出場者を決定するということのようだ。

しかし、大物歌手が次々と舞台から姿を消した今年、出場者の顔ぶれに疑問を抱いた人も少なくない。

アンケートにもとづいて最終的な判断を下すのは、もちろんNHKのスタッフだ。'76年から20年以上、総合演出、CPなどの立場で紅白に関わった元NHKの島田源領は、出場者選考の過程をこう振り返る。

「ぼくがやっていた頃は、芸能部長やCPをはじめとした7~8人のスタッフで何度か会議を開いて決めていました。自由な時代でしたね。

最も重視したのは、やはりアンケートです。出演枠が紅白各20組とすれば、上位10組まではアンケート上位陣で文句なしに決まる。それ以外は、CDの売り上げや、コンサートの動員力を加味して検討していました」

 

NHKの本音と建て前

だが、近年までNHKエンターテインメント番組部に勤めていた元スタッフによれば、現在の出演者選考はエンターテインメント番組部長と、紅白のCP・デスクの3人のほぼ専権事項だという。

「発表直前まで、局内の人間はほぼ全員、出演者を全く知りません。NHKの経営陣が選考に絡むこともほとんどない」

アンケート重視というNHKの公式回答を「建て前に過ぎない」と指摘するレコード会社関係者もいる。この人物によれば、毎年NHKは、各レコード会社から出演者の「プレゼン」を受けている。

「9月末から10月の間に、NHK側から『プレゼンしてください』という連絡が公式に来るんです。去年は各社ごとにまとめて(推薦したいアーティストを)持ってきてくれということでしたが、今年はさらに細分化して、部署ごとに別々にやりました。

レコード会社が出したいアーティストや歌手と、NHK側の思惑が一致する場合ももちろんあります。しかし、NHKにも『本音』がある。どうしても出演して欲しいアーティストに対しては、NHKが独自のルートで説得に動く。スケジュールを押さえるために夏前ごろから接触しています」

NHKが「本音」で出演して欲しい歌手とは、'02年に黒部ダムからの中継で出演した中島みゆきや、'09年にサプライズで登場した矢沢永吉のような、企画・演出上の目玉となる人物である。今年ならば、この「目玉枠」にあたるのは、現在も出演交渉が続いているSMAPだと考えられる。