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医療・健康・食 週刊現代
気をつけろ!減塩しすぎると「認知症」になる
知らないと寿命が縮む新常識

「減塩=正義」。この数十年にわたってこの説は揺るがないように見えた。しかし、実は減塩が逆の効果を生むとしたら――最新の研究から分かった「知らないと寿命が縮む」新常識をご紹介しよう

減塩で心臓病も増える

「いま、世界の研究の現場で、減塩しすぎることのリスクに注目が集まっています。

きっかけは、'13年にアメリカ医学研究所(IOM)が出したレポート。それまでは、食塩を制限することによって血圧が下がることから、減塩は有益だと考えられてきましたが、それが実際に疾患予防につながっていくか否かについては、詳しく調べられてこなかった。『塩分を減らすことは体に良い』という考えだけが独り歩きしていたのです。

しかしこのレポートは、『塩分を減らす=病気を減らす』と言い切るにはエビデンス(証拠)が足りないのではないかと疑問を提起して波紋を呼びました。これを契機に、減塩の問題についての研究が続出するようになったのです」

こう話すのは、愛媛大学社会共創学部教授・小原克彦氏である。

これまで日本では、猫も杓子も減塩を推奨してきた。曰く、「塩の摂りすぎが高血圧の原因」「とにかく減塩を心掛けよ」と。その「常識」に苦しんできた人も多いだろう。60代の男性が言う。

「私の血圧は、上が135㎜Hgと、それほど高いわけではありませんが、妻から『いまから注意しておいたほうがいい』『とにかく減塩』と言われ、焼き魚の塩を減らされ、大根おろしに醤油をかけるのも禁止、しかも減塩味噌を使われる……と食事は非常に物足りないものになっています」

しかしいま、その「減塩=正義」という常識が覆されつつある。「減塩しすぎると認知症になる」という事実が明らかになったからだ。

どういうことか。近年続々と、行き過ぎた減塩が動脈硬化などにつながることが指摘されている。高齢者にとって動脈硬化は、脳梗塞などを引き起こし、その予後に現れる「血管性認知症」につながる事態だ。

九州大学が実施している疫学調査「久山町研究」によると、正常な血圧の人と比べて、軽い高血圧、つまり動脈硬化傾向の人は4.5~6倍、重度の高血圧の人では5.6~10.1倍に、血管性認知症の発生頻度が高くなるという報告があるほどだ。

減塩は認知症の危険性を増大させる。無闇な減塩は、むしろ健康を害しかねない。

IOMの報告が出て以来、減塩がリスクを高めるという研究が続出している。'14年、アメリカの著名な医学雑誌『ニューイングランドジャーナルオブメディスン』に発表された論文が、その筆頭である。前出の小原氏が解説する。

「この研究では、10万人以上の人々を3.7年間にわたって追跡調査し、尿中に含まれるナトリウム量から計測した食塩の摂取量と、心血管疾患(心筋梗塞や狭心症など)になったり、それが原因で死亡したりするリスクの関係を調べました。

そこで判明したのは、たしかに食塩の摂りすぎ(この報告の場合は約15g以上)によって疾患のリスクは増大するけれど、それと同時に、減塩(この報告の場合は約7.5g以下)の場合にもリスクが増えるということ。つまり、『増塩』と同様、塩を減らしすぎることにも心血管疾患のリスクがあることが示されたのです」