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DeNA・村田マリ執行役員が落ちた「ベンチャードリーム」の罠
あの時、彼女は筆者にこう語った

「AR(拡張現実)は今後3年ぐらいでは流行らないと思うから、とりあえずメディアをやればいいんじゃない?」

およそ1年半前、筆者がシンガポールで村田マリ氏と会った時に、こんな言葉をかけられたのを覚えている。一連のキュレーションメディア騒動でその責任を問われている村田マリ・DeNA執行役員。出会った経緯については後述するが、筆者はこのひと言に、今回の問題の原因が集約されているように思えてならない――。

【PHOTO】gettyimages

医療情報メディア「WELQ」を始めとするDeNAのキュレーションメディア全10媒体の記事が、著作権を無視した他サイトの「コピペ」にまみれたものであるとして紛糾、全媒体の全記事が非公開化されるなど、波紋が広がっている。

12月7日、時間無制限で行われた記者会見では、直前に夫を亡くしたばかりのDeNA南場智子会長や、守安功社長、小林賢治経営企画本部長が記者の厳しい質問に真摯に対応する一方、女性向けメディア「MERY」を除く9媒体の事業統括責任者である村田マリ執行役員が、健康上の問題などを理由に会見に出席しなかったことが、批判を集めている。

立ち上げからわずか9カ月で住宅・インテリア関連メディアiemoをDeNAに売却、一躍ベンチャー界の寵児となった村田氏だが、その「転落」もまた早かった。その原因はどこにあったのか。筆者の体験も基にしながら、探っていきたい。

根っからの「売却屋」

今回問題になった10媒体の運営を担うキュレーションプラットフォーム事業は、DeNAがMERYを運営する株式会社ペロリと、住宅・インテリア関連メディア「iemo」を運営するiemo株式会社を総額50億円で買収したことで立ち上がった事業である。

守安社長は記者会見冒頭で、「comm」や「マンガボックス」など自社が力を入れた新規事業がなかなかうまくいかなかったこと、フリマサービス最大手の「メルカリ」など他社のスタートアップ事業が成功していることをうらやましく感じていたことを正直に語った。

「永久ベンチャー」たることを掲げるDeNAだが、社員2000人以上を抱える東証一部上場の大企業となって久しくなり、社内で創業期のようにベンチャー精神を持った人材を育てることは難しかったのかもしれない。そこで目をつけたのが、創業者ごとスタートアップを買収して「新たな血」を取り入れることであった。

 

DeNAに限らず、本業に続く「第2の柱」を求めて買収に乗り出す企業は多い。とりわけ、なにか1つの分野で大きく当てて急激に成長し上場したIT企業は、流行りの事業一本槍では遠からずピークに至るのを自覚しており、上場によって得た資金の使い道はたいてい、企業買収か海外展開に当てられる。

もっとも有名かつ成功した事例で言えば、画像投稿SNSのInstagramやコミュニケーションアプリのWhatsappという潜在競合をはやめに買収し、自社の成長に役立てたFacebookが挙げられる。

売り手側にとっても、以前は「身売り」などネガティブな文脈で語られることが多かった事業売却だが、買収元のリソースが使えるようになることで事業成長を加速させることが期待できるうえ、株主が買収の対価としてお金を得られるという大きなメリットがあり、今ではポジティブに捉える起業家も多い。

それどころか、最初から売却狙いでサービスを立ち上げる起業家、それを見越して資金を入れる投資家もいる。

村田マリ氏もそんな「売却屋」の1人だった。DeNAに会社を売却する前は、ソーシャルゲーム大手のgumiにも自社を売っており、その他にもサービス単位でいくつも事業売却を行って財をなしてきた。