糸井重里さんと1年で200日会って飲んで学んだこと

島地勝彦×田中知二【第2回】
島地 勝彦 プロフィール

トモジ おれの子供の頃を振り返ってみますと、いつもどうしたら怒られないかを考えていました。悪いことをしなければ怒られないんですけど、やっぱり子供は悪いことをしたいものです。所詮、愉快犯なんですけど、なにかやりたい。だから、どうしたら怒られないかばかり考えていましたね。

シマジ たしかに、人生を振り返ってみると、小中学生のころがいちばん1日が長かったような気がするね。時間を持て余しているから、なにか悪いことをしたくなるんだろうね。

トモジ 中学生のころ、体育の時間、部屋に鍵がかかっていたので窓ガラスをはずして、みんなでなかに入ろうとしていたら、そこへ担任の先生が通りかかって「これをやったやつは誰だ?」というので、「おれが考えて実行しました」と申告すると・・・

シマジ ほう、なかなか男らしいじゃないの。

トモジ まあ、いつも目をつけられていたから、なにをしてもおこられるんですけどね。

すると先生が「窓から入るなんて、お前は泥棒か?」というんです。部屋に鍵をかけていたほうが悪いと思ったんですけど、それで、先生に三角定規で思いっきり叩かれて、定規がド派手に割れたんですね。でも軽いバルサ材ですからたいして痛くはないんですが、ここぞとばかりにもんどり打って倒れてやったんです。

シマジ ガッハッハッハッ。トモジは演技者だね。

ヒノ プロレスラーみたいな中学生だったんですね。

シマジ だからお前は編集者になってプロレスの記事をよくやっていたんだな。

トモジ 三角定規は粉々なっているし、子供相手にマズイことをやっちゃたかなと感じて、先生は青くなっている。おれは「ああ、痛い、痛いよー」って泣いている。それ以降その先生には殴られなくなりました。

シマジ 子供の悪知恵だな。トモジは怖い子供だったんだね。

トモジ 「子供は大人の父なのだから」ですよ。小ずるいテクニックを使ってでも、目上の人間の弱みを握って放さないとか、中学生のころはうまく生き抜くための技を日夜考えていましたね。

シマジ おれも小学生のころから悪戯ばかりしていたから、よく担任の先生に「廊下に立ってろ!」と言われて全校生徒のみせしめになっていたことがあるけど、ある日先生がおれを廊下に立たせたまま忘れてしまってね、夜の7時頃になって慌ててやってきて「ごめん、ごめん」っていうんだよ。

当時、おれのオヤジは中学校の先生だったから、「お父さんには内緒にしてくれ」っていって家まで送ってくれたんだけど、おれは「先生、大丈夫です。うまくごまかしておきますから」といって、今度は俺の立場のほうが断然有利になった。

玄関にオフクロが出てくると「こんな時間まですみません。シマジ君といろんな話をしていて遅くなってしまいました」と先生が頭を下げる。叩頭している先生を横目でみながら、「先生、今日は面白かったです」というと、先生はニッコリと笑って帰って行った。それからというもの廊下に立たされることはなくなったね。

そういう経験があるからこそ、いまおれは悠々と伊勢丹のバーに午後1時から8時まで休憩なしで立っていられるんだろうな。子供のときにウォーミングアップをしていたわけだ。いまではむしろその先生に感謝しているよ。

トモジ それって、もの凄いこじつけのような気がしますが。

ヒノ シマジさん流の“過剰なるリアリズム”ですね。

シマジ 「子供は大人の父なのだから」か。どこかで使えそうだな。覚えておこう。

〈⇒第3回

田中知二(たなか・ともじ)
(株)集英社インターナショナル取締役
1955年群馬県生まれの茨城県育ち。最終学歴、駿台予備校(2年間)。同い年に、スティーブ・ジョブス、ビル・ゲイツがいる。特に、ふたりとの親交はない。『月刊PLAYBOY』『週刊プレイボーイ』『BART』と、ずっとシマジの下で編集生活。「そのことが、良かったのか、悪かったのかは、後生の判断に任せたい」

著者: 開高健、島地勝彦
蘇生版 水の上を歩く? 酒場でジョーク十番勝負
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1989年に刊行され、後に文庫化もされた「ジョーク対談集」の復刻版。序文をサントリークォータリー元編集長・谷浩志氏が執筆、連載当時の秘話を初めて明かす。

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