命をかけて、息子を産んでくれた妻へ~人気キャスターが綴ったがん闘病記

週刊現代, 新井省吾 プロフィール

もっと一緒に泣いてあげればよかった

今もなお、清水アナには胸に針を刺すような痛みを伴う、強い後悔がある。

「闘病中、妻は一度も弱音を吐かず、泣くこともなかった。それが彼女の強さであり、優しさでもあったのですが、振り返れば、もっと一緒に泣いてあげればよかった。それができなかったことを、僕は生涯の悔いとしています」

時が経つにつれ、悲しみは薄らぐどころか、ますます深まる。さらに、もっとしてあげられることがあったのではと、後悔も尽きないという。

妻を亡くした当初は、このままキャスターを続けていいのか悩んだこともあった。

「同情の目で見られたくないという気持ちが強かった。そんなことを気にしている人間がキャスター席に座っていいのかと。

でも今は違います。僕は、多くの人の支えで今もキャスター席に座らせてもらっています。確かに以前の自分とは違っていると思う。そんな僕でも、いや、そんな僕だからこそ伝えられることがあるならば、本当の意味で人の痛みや悲しみがわかる、人の心に寄り添えるキャスターになりたい。妻もきっと、それを望んでいるはずです」

そんな想いを一つの形にするため、今年4月、本の印税を原資に「一般社団法人清水健基金」を設立した。新薬研究や難病対策、入院施設の充実などに取り組む団体や個人の事業への助成のほか、企業に支援を呼びかける活動も行っている。

キャスターとして多忙な日々を過ごす中、仕事の合間を縫って時間が許す限り講演会にも精力的に出席する。

「僕ら家族の話をすると、皆さん、一緒に泣いてくれるんです。たぶん、みんな何かと闘っていて、でもグッとこらえたり、悔しかったりするから、自然と涙が流れてくる。今を闘っている方々に寄り添って、僕なりに何か伝えられることがあるならば、精一杯の『想い』を伝えていきたい」

それにも増して、誰よりも伝えたい相手がいる。いつか息子に、ママの強さと優しさのすべてを話して聞かせるつもりだ。乳がんで亡くなった妻・奈緒さん(享年29)。そのとき、長男は生後112日だった。関西の人気テレビキャスターが初めて明かす、家族3人の闘い。

ありがとう、奈緒。——
この子の手を、僕は絶対に離さない。

乳がんで亡くなった妻・奈緒さん(享年29)。そのとき、長男は生後112日だった。関西の人気テレビキャスターが初めて明かす、家族3人の闘い。

「週刊現代」2016年12月17日号より