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ナンバーワンになれなかったアイドルが歌った「世界に一つだけの花」
SMAPが「国民的アイドル」になるまで② 

今月、累計売上300万に届きそうな楽曲「世界に一つだけの花」。ダブルミリオンが生まれた背景には何があったのか? 新刊『ジャニーズと日本』(講談社現代新書)の中から、SMAPが「国民的アイドル」に至るまでの一部を特別公開!(⇒Part①はコチラ

 

ナンバーワンの歌

SMAP最大のヒットと言えばもちろん、2003年の「世界に一つだけの花」である。

SMAP初のダブルミリオンを記録した曲で、解散騒動をきっかけにした購買運動が起きたこともあり、現在でも売れ続けている。

2016年9月に放送された『30周年記念特別番組 MUSIC STATION ウルトラFES』(テレビ朝日系)において、「日本に影響を与えた曲ベスト100」の第一位に選出されたことも記憶に新しい。

シンガーソングライターの槇原敬之が作詞作曲を担当した「世界に一つだけの花」は、1990年代のSMAPの曲のように、クラブカルチャーに目配せしたものではなく、音楽マニア受けする類の曲でもないだろう。

むしろ、誰もが心地よく思えるメロディとストリングスを使ったわかりやすいアレンジが特徴である。しかし、国民的アイドルとしてのSMAPには、この時期、そのくらいわかりやすい音楽が求められていたのかもしれない。

個人的に思い出すのは、音楽にそれほど関心のない友人が、その時期、「カラオケに行ったら必ず『世界に一つだけの花』を入れる」と言っていたことだ。社交場としてのカラオケは、自分が好きな曲を歌うのではなく、みんなで歌える曲を「入れる」。あとは、マイクをまわして手拍子とともにみんなで歌う。そういう選曲としてふさわしいのが、「世界に一つだけの花」だったということである。

とりわけ、ナンバーワンにならなくてもいいんだ、そのままで特別な一人なんだから、という多様性や個性の喜びを謳った歌詞のメッセージはとても有名だ。

小泉新自由政権という競争社会に対するアンチテーゼの声が高まった2000年代前半。この曲は、そんな時代の空気とも重なっていた。

しかし、この曲の説得力はなによりもやはり、SMAPが歌うことにあっただろう。

曲のなかで歌われている、個性ゆたかな「花」のありかたが、まずもってSMAPの面々のように思えた。

なにより、デビュー当初のSMAPがナンバーワンになれなかった、売れなかった、というところから出発しているという点に、「ナンバーワンにならなくてもいいんだ」というメッセージの力強さが宿っている。

それは、オリコンだの「日本に影響を与えた曲ベスト100」だので「ナンバーワン」を取りまくってなお、である。

「ナンバーワン」になることは結果に過ぎない。「ナンバーワン」をとるかとらないかよりも、この曲における大事なメッセージは、何事にも一生懸命になる、という非常に当たり前のことだった。

ジャニーズの異端であり、アイドルとしてなかなか「ナンバーワン」になれなかったSMAPが、ただ一生懸命な姿を見せていたように。己の花を咲かせればいいのだ、と。

こうして、「世界に一つだけの花」は、多くの人の心をつかんだ。

1990年代に音楽ファンを唸らせていたSMAPだったが、「夜空ノムコウ」や「世界に一つだけの花」を契機に、2000年代にもなると、いつのまにか大きなものを背負わされてしまっていた。

ある時代なり世代なり、あるいは、ある社会なりの代弁者となること。時代や社会に向けて歌を届けること。

国民的アイドルには、少なからずそういうことが求められる。

2003年の紅白歌合戦では、「目を閉じて2003年を思い出して下さい」という木村拓哉の言葉を皮切りに、「僕たちに今、何ができるでしょうか」とSMAPから日本国民に問いかけられた。

 
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