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なぜ「ピコ太郎」は世界を席巻したか? 予測不可能なヒット新時代
2016年は「時代の大転換点」だった

世界的現象は「まぐれ」ではない

今年の夏。8月21日、日曜日のこと。本書(『ヒットの崩壊』)著者と僕は巨大フェス「サマーソニック」幕張会場の放送ブースにいた。32時間ぶっ通しで生中継された「ニコ生」番組で著者と僕は共演したのだ。

番組の総合司会はなんと、現在「ピコ太郎のプロデューサー」として「ペンパイナッポーアッポーペン」を世界的にヒットさせている古坂大魔王さんだった。

動画投稿サイト「YouTube」に、「PPAP」がアップされたのは「サマソニ」が終わって4日後の8月25日のこと。今にして思えば、ジャスティン・ビーバーがTwitterでツイートしたことから爆発的に広がった「ピコ太郎」フィーヴァーが、単なる「まぐれ」ではなかったこともわかる。

古坂さんは「フェス(リスナー参加型音楽の魅力)」「ネットの有効活用」「そして英詞曲で、洋楽と邦楽の垣根を超える」というすべてを理解し、クリアしていたのだから。

「誠実な審判」としての視点

「2016年は『時代の大転換点』」と主張する本書。圧倒的なデータをフラットにテンポよく並べながら、「CDが売れない」「ライヴやフェスは盛り上がる」などの定説に「本当だろうか?」と疑問を呈する。

特に2000年以降の音楽の現場と「J-POP」の成熟と混乱を肌身で感じてきた著者の「誠実な審判」であろうとする視点は、音楽家である僕にも響いた。

本書『ヒットの崩壊』で、彼が「崩壊」していると指摘する「ヒット」とは、旧態依然のメディアと作り手側が意図的に仕掛けて作る「ヒット」のこと。しかし、予想もしない角度から新たな「ヒット」は生まれうる。その主張をより鮮明に印象づけることになったのが、わずか3ヵ月と少し前の古坂さんと共演した記憶だ。

出版時期から考察して9月までに執筆された本書に、夏に著者が共演まで果たした「ピコ太郎」についての記述はない。

その今年最も書くべきことが書かれなかった事実こそに僕は、まさに数週間で運命は変わるし、思いもよらぬパターンで新たなヒットが生まれる大転換時代だと指摘する本書の正当性を感じる。

西寺郷太(にしでら・ごうた)
'73年生まれ。「ノーナ・リーヴス」にてボーカル・作詞作曲を行う他、執筆活動も。『プリンス論』他

週刊現代』2016年12月17日号より