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社会保障・雇用・労働

「正社員の有効求人倍率過去最高!」を素直に喜べない理由

給与が上がらないのなら…

全国的に有効求人倍率は過去最高

人手不足が一段と鮮明になってきた。

求職者1人に対して何件の求人があるかを示す「有効求人倍率」は全国的な上昇を続けている。厚生労働省が11月末に発表した10月の有効求人倍率(季節調整値)は1.4倍と、1991年8月に同じ1.4倍を記録して以来、25年2ヵ月ぶりの高水準になった。

最も人手不足が深刻なのが東京都で、有効求人倍率は2.07倍に達する。もっとも大都市部だけの問題ではなく、都道府県でみると、福井県が1.90倍、岡山県が1.76倍などとなった。沖縄県でも1.0倍を超え、すべての都道府県が1倍以上になった。

まさに、バブル期どころか高度経済成長期の人手不足が再来したかのような状況なのだ。

ここへ来て新たな傾向が見え始めた。東京都での正社員の有効求人倍率が1.26倍と、過去最高を更新したのである。パートやアルバイトなど非正規雇用だけでは働き手が集まらないことから、より待遇の良い正社員としての求人を増やす企業が出てきたのだ。

 

この傾向は、総務省の労働力調査にも表れている。

10月の雇用者数は5793万人と1.5%、89万人増加した。雇用者数が増えたのは46ヵ月連続。今年に入って前年同月比で1%を超す高い伸びが続いている。

そんな中で目立っているのが正規雇用の増加。10月は3405万人と2.2%増えた。

2014年末までは非正規雇用が大きく増える一方で、正規雇用は減少傾向にあったが、ここ1年は、正規も非正規も増えている。つまり、新しい雇用が生まれていることを示しているが、10月は非正規の伸びが1.6%だったのに対して、正規が2.2%増と、今年4月以来の正規の伸びが上回った。

安倍晋三首相は折に触れて「アベノミクスによって雇用が生まれた」と胸を張るが、それはあながちウソではない。雇用者数は第2次安倍内閣が発足した2012年12月までは前年同月でマイナスだったが、翌1月からプラスに転じた。それ以来、46ヵ月連続でプラスになっているのだ。

2012年10月の雇用者数は5546万人だったので、この4年間で247万人も雇用者が増えたことになる。少子化によって新たに働きに出る若者の数は減っている中で、247万人も雇用が増えたのだから、人手不足感が一気に高まるのは無理もない。女性や高齢者の雇用が大きく増えたのは想像にかたくない。

一方で完全失業者は1年前に比べて13万人減って195万人となり、77ヵ月連続で減少している。完全失業率は3.0%と過去最低水準が続いている。3.0%というのは国際的に見れば完全雇用状態だ。

世界の政治家の最大の政策ターゲットは、雇用を生んで失業率を引き下げること。世界的に見ると安倍内閣の経済政策は成果をあげていることになる。

アベノミクスの失敗が言われる一方で、安倍内閣が高い支持率を維持しているのは、「身近なところで失業者が出ていない」「働こうと思えば職が見つかる」といった雇用環境に負うところが大きいのだろう。

ただ、雇用環境の好転が、必ずしも家計の懐を潤わせていないという面がある。安倍首相は企業経営者に「賃上げ」を繰り返し求めているが、なかなか給与が増えないのだ。アベノミクスによる大胆な金融緩和で円高が大幅に修正され、輸出企業を中心に企業収益は改善している。

それが給与の増加になって表れれば、国民の幅広い層で景気回復を実感できるようになるのだが、現実にはそうなっていない。

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