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大金持ちを襲う「苦悩と後悔」〜10億円の大豪邸でも幸せになれない
家族が崩壊することも…

前を通る誰もが見上げる大豪邸。一体、誰がどんな暮らしをしているのか—。実際に訪ねてみると、内装も豪華絢爛。ただし、大金持ちの彼らにも、知られざる悩みがあるようで……。

 

足が沈むビロードの赤じゅうたん

都内の閑静な高級住宅地、そのなかでも芸能人や会社経営者がこぞって住んでいるといわれている一角に、この「10億円クラス」の超高級物件はある。

その邸宅の外観は、まるで西洋の「宮殿」のような豪華さ。5階建てで、各階にはめ込まれた洋風の格子窓が雰囲気を醸し出している。一瞬海外に来たかと錯覚するような外観と敷地面積を有しているが、内装も想像を絶する「別格」な世界が広がっている。

玄関から入ると、動線に敷き詰められているのはビロードの赤じゅうたんで、足を踏み入れると、柔らかく沈み込む。そのほかの床すべてはよく磨かれたイタリア産の大理石が敷き詰められている。また天井にはシャンデリアが吊り下げられていて、まるで迎賓館に招かれたかのような気分になる。

この邸宅の設計を手掛けたのは、ある有名デザイナー。オーナーの「宮殿を建てたい」という強いこだわりを叶えるため、デザイナーは何度も海外へ渡航、完成までには普通の物件の倍の時間を要したという。

建物そのものがひとつの「芸術品」のような仕上がりのこの邸宅だが、その細やかなこだわりは枚挙にいとまがない。たとえば、階段の手すりは金属製で、ところどころに職人の手による精巧な細工が施され、おまけに1階から5階までつなぎ目がなく繋がっている。この手すりだけで1億円近くのおカネがかかっているのだそうだ。

また各階の階段の壁には大きなステンドグラスが輝いている。そのお値段はなんと1枚500万円。万が一のための「保証書」までついているというから驚きである。

軽く20畳はある広い居間を彩るのは、イタリア製の丁寧な刺繡が施されたソファーや、天井に描かれた天使の画。さらにその天井からもシャンデリアが吊り下げられており、部屋をまばゆく照らしていた。

「内装のなかには、今では再現不可能なものもあります。周辺の坪単価などを計算しても、同じものを建てたら、10億円では済まない金額になる」(高級物件を取り扱う不動産仲介業者)という。

このように、日本の高級住宅地には、選ばれし大金持ちだけが手に入れることができる「夢の住処」がある。次ページにズラリと並んでいるのは、今売り出し中の最低でも5億円を超える都内の豪邸の数々だ。

そんな大豪邸の主の一人、松田博嗣氏(仮名、60代)はこう語る。

「貿易関連のビジネスが軌道に乗って、まとまった年商を上げられるようになってきたのが50歳になるくらいのころ。一念発起して家を建てることにしたのですが、自分の理想の『終の住処』を構えようと、欲しかったものすべてを贅沢に取り入れようと思いました」

幅4mのワインセラー

松田氏の邸宅は、都西部の主要駅に近い繁華街にある。一本裏道に入ると落ち着いた雰囲気の住宅街があり、その中で一際目を引く白い石造りの外壁がそびえたっているのが松田邸だ。住宅密集地ではあるが道路側には窓ガラスもなく、プライバシーやセキュリティーはしっかりと確保されている。

松田氏は、まず1階のガレージに招き入れてくれた。真っ先に目を奪われるのは、百貨店の立体駐車場のような車の回転台が床にあること。その回転台を囲むように並ぶ駐車スペースには、最高級クラスのBMWやベンツなどの外車が4台鎮座している。広さも、おそらくこのガレージだけで優に150m2はあるのではないだろうか。

「最近は忙しいし、買い物に行くときくらいにしか使わないんですけどねえ……」と頭を掻く松田氏は、続いて室内へと招き入れてくれた。長い廊下を抜けた先のリビング・ダイニングには、ホテルのスイートにあるような、美しく調度された家具が並ぶ。値段を尋ねると、控えめに「このソファーは100万円で、そのスピーカーは200万円くらいだったかなあ……」と教えてくれた。

さらに奥へ進もうと渡った廊下沿いには、幅4mはあろうかという大きなワインセラーがあり、大量のワインが陳列されていた。まるで高級イタリアンレストランに来たかのような光景だ。

「実は商売で、ワインの輸入も少しやっているので、結構な上物も持っていますよ。もともとお酒は好きだったので、やっぱりワインセラーは欠かせない、と家を買うときから思っていました」

その動線の先にあるのは、10畳程度の畳張りのゲストルーム。上座には掘りごたつになっているテーブルがあり、よく見るとその卓上には切れ目が入っていて、フタが開くようになっている。「これ開けるとね、網が敷いてあるんですよ。お客さんが来たときは、ここで焼き鳥とかをやったりしますね」と松田氏は楽しそうに語る。

ゲストルームといえど、設備に抜かりはない。専用の浴室には、旅館の個室風呂のような檜造りの浴槽がしつらえてある。

さらに驚くのは、ゲストルーム上座のガラス張りの窓から見える、サファイアブルーにライトアップされて煌く水面である。15m×10mほどの本格的なプールだ。

「うちには社会人の息子と大学生の娘がいるんですが、息子が大学生のころは、夏になると息子の友人たちが掃除を手伝ってくれた。そのあと『プール開き』といって遊んでくれていました」

誰もが憧れるような生活を送る松田氏だが、やはり「これからもここに住み続けたい」と語る。

「息子は一般企業に就職して、今は地方に勤めています。娘もそろそろ就職なので、この家を出ていくかもしれません。夫婦二人だけになれば持て余すところも増えてくるのかな、と思っています。

ですが、息子が東京に帰るときは必ず寄ってくれるし、結局この家を気に入っているので、引っ越しは今のところ特に考えていないですね。もちろんみんなで暮らせれば理想的ですが、子供に手がかからなくなったぶん、友人を招いて、パーティ三昧で楽しくやっていくのもありかな、と思っています」