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作家・馳星周がどっぷりのめり込んだ「藤原不比等」とは何者か?

第17回ゲスト:馳星周さん(後編)

大人の遊びを知り尽くした伝説の編集者・島地勝彦が、ゲストとともに“男の遊び”について語り合う「遊戯三昧」。2016年の締めくくりとなる今回は、ご存じ!作家の馳星周さんをお迎えした。後編では、シガーとウイスキーの愉しみ、そして話題は、構想2年を経て書き上げた初の歴史小説に――。

前編【 新宿ゴールデン街「深夜プラス1」の想い出

家が一軒建つくらいは身銭を切って

日野 馳さんと島地さんというと、シガーでもつながるのかと思いますが、馳さんも島地さんの影響でシガーを始められたんですか?

 きっかけは違うんですけど、葉巻馬鹿の先輩としていろいろ教えてもらいました。

島地 葉巻馬鹿。いい言葉だねえ。月刊プレイボーイでシガーの連載をしてもらって、ぼくが社長だった頃に集英社インターナショナルで『リアル・シガー・ガイド』という本を出版させてもらいました。あれはいい本に仕上がりましたね。今も葉巻馬鹿のバイブルとしてすごく評価が高いんですよ。

 ありがとうございます。作家の世界で葉巻となると、やっぱり北方謙三先生ですよね。始めたら北方さんに仁義を切っておかないと、後で何をいわれるかわからないから、「実はぼくも最近葉巻を始めました」と報告したんです。すると、いつもの調子で「ほう、そうか」とひと言。

その後、こっちは「シガーカッターとかライターとか、どういうのを選べばいいんですかね」と。もちろん裏には(北方さん、高いやついっぱい持ってるから一つくらいくれないかな)という下心があったんですが、見透かされていたのか、葉巻をくゆらせながらニヤリと笑い、「それはな、自分で勉強しないとだめなんだな」と。まあ、確かに身銭を切って勉強したおかげで世界は広がりましたけどね。

島地 本に「日本で誰よりも葉巻に対する深い知識を持っているのは、自腹を切り、世間の冷たい目と戦い、それでもなおかつ葉巻がもたらす悦楽に淫している喫煙者なのだ」とあって、その通り!と快哉を叫びましたよ。今まで、家が一軒建つくらいは身銭を切ってるでしょう。

 それは間違いないですね。

死ぬまでかかっても吸いきれない

日野 シガーは管理が大変で、島地さんは毎朝、湿度計をチェックして保存場所をちょっとずつ移動するのが儀式になっているそうですが、馳さんも同じくですか?

 家にシガールームがあればそれでもいいんですけど、細かく管理するのが面倒だから、今は業者にまかせています。スイスの葉巻商にストックがあって、定期的に送ってもらうんですが、自分がどれだけストックしてるのか正確な数はわかりません。たぶん、死ぬまでかかっても吸いきれないくらいは確保してあると思います。

島地 シガーも、ワインやウイスキーと同じように熟成するから、古いものをしっかり管理しておけばどんどんうまくなる。今は貴重なものもあるだろうから「売ってくれ」となることも多いんじゃない?

 ありますね。でも絶対に売らないですよ。売ったら、次に欲しくなったときはその何倍も払わなくちゃいけないのがわかってるから。

島地 キューバとアメリカの国交が回復して、シガーがどうなるか心配する人もいますね。

 クオリティは間違いなく落ちるでしょうし、アメリカで大量に消費されるようになれば日本に入ってこなくなる。これからシガーを始める人にとっては冬の時代ですね。本が売れてた頃に、無理してでも買っておいてよかったと思います。

日野 だいたい一日に何本くらい吸われるんでしょうか。

 3本くらいかな。朝と、夕食の後と、その後のお酒タイムで3本。

島地 ぼくは5本くらいですね。仕事中は吸わない?

 書くことに集中してると味がわからないし、味に集中すると書けないので。書き始める前に海外のサイトを見て、1箱ウン十万からウン百万のヴィンテージ・シガーを見つけたら、「ベストセラーを出してこれを買う!」とモチベーションを高めることはありますけどね。