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作家・馳星周を生んだ新宿ゴールデン街「深夜プラス1」の想い出

第17回ゲスト:馳星周さん(前編)

大人の遊びを知り尽くした伝説の編集者・島地勝彦が、ゲストとともに“男の遊び”について語り合う「遊戯三昧」。2016年の締めくくりとなる今回は、ご存じ!作家の馳星周さんをお迎えした。前編では、純朴な田舎の青年がノワール小説の旗手となるまでの経緯、そしてシマジとの関係に迫る――。

デビュー20周年の節目に

島地 おい!バンドーッ!

日野 だから違いますって。ぼくは日野で、今回のゲストは作家の馳星周さんです。確か、馳さんの本名は「坂東さん」でしたよね。

 姓は坂東、名は齢人。父親がガチガチの共産党員だったから、齢人は「レーニン」から拝借したもので「としひと」と読みます。

島地 すまん、すまん。「深夜プラス1」で、内藤陳さんから「おい、バンドーッ!」と呼ばれていた印象が強いから、つい口に出てしまいました。ところで金髪はいつやめたんですか? 馳星周といえば金髪のイメージだから、今日は最初からやられた感があるなあ。

 最近やめました。つい2週間くらい前だったかな。今年はいちおうデビュー20周年なんですよ。若い頃はいきがってる部分もあって金髪を通してきたけど、50歳も過ぎたことだし、もういいかなと。夜な夜な飲み歩くような歳でも、環境でもないですからね。

島地 最初に馳さんに会ったのは新宿のゴールデン街だったし、『不夜城』でデビューしてからも歌舞伎町を舞台にした作品が多く、ノワール小説の旗手だった馳さんが、今は軽井沢で健康的な暮らしをしているんだもんね。

 軽井沢に引っ越してもう10年になりますね。

日野 犬のために引っ越したと、『走ろうぜ、マージ』で読みました。あの本は感動的でした。

島地 前からものすごい犬好きだったからね。子供の頃から犬と一緒だったんですか?

 実家は北海道ですが、両親が「生き物は死ぬから嫌だ」といって飼ってくれず、祖父の家にいた犬とよく遊んでいました。ずっと「大人になったら犬を飼う」と決めていて、30歳の頃、縁あってバーニーズ・マウンテン・ドッグを飼うようになったんです。

犬中心の超健康的な生活

島地 ぼくは子供の頃に怖い思いをしたことがあって、犬は未だにちょっと苦手なんですが、そのバーニーズなんとかは大型犬ですよね。

日野 怖い思いの経緯は大沢在昌先生の回をご覧ください(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/41520)。

 いろんな犬種を飼う人もいますけど、ぼくはバーニーズ・マウンテン・ドッグひと筋です。頭がよくて性格も穏やかで、人懐こく、毛並みも美しい。最初に飼ったマージが老犬になって、空気のいいところで過ごさせてやろうと思ったのが、軽井沢に引っ越すそもそものきっかけでした。

島地 軽井沢で犬を散歩させる姿は、一緒に飲んだくれてた頃からはなかなか想像できませんが、やっぱり規則正しく健康的な生活なんですかね?

 夜遊びはさんざんやったし、無茶な飲み方もしました。そろそろ違う生き方もいいんじゃないかなって、犬が導いてくれたのかもしれません。田舎は朝が気持ちいいし、犬と一緒に散歩するのが日課だから、当然、夜は早く寝るようになります。

外に飲みにいっても11時には店が閉まるし、家で飲んでいても、朝早くから起きてると12時頃には眠くなるんですよね。犬の散歩とご飯の支度、その間に執筆の時間がある毎日で、健康には自信があります。

日野 島地さんも見習ってほしいです。馳さんはご自分で料理もされるんですか?

 料理は、かみさんと同棲した頃からだから、主夫歴20数年です。最初、かみさんは会社勤めをしていて、こっちはずっと家にいたものだから、自然に食事の支度はぼくの担当になったわけです。

今の料理本はレシピがだいたい2人分ですけど、昔は4人分が基本でしたよね。そんなことも知らず、レシピ通りに材料を買ってきてつくると、2人じゃ食いきれないくらいの量になるんですよね。なんか多いなと思いながらも、当時は貧乏だったし、残すのはもったいないから全部食べていたら、2人ともブックブクに太っちゃって…。あの頃がいちばんお金がなかったはずなのに、いちばん太ってたかもしれません。

今日も朝出かける前に、かみさんのお昼ごはんと晩ごはんをつくって、犬のごはんも用意して出てきたんですから。