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ひらめきから大ヒット!キッチンの「クリナップ」意外な社名の由来

ヒントはココに転がっていた

団地が憧れの時代

高度経済成長のピークを迎える'60年代まで、台所の流し台といえばタイル張りか人造石で造られたものが主流だった。だがタイル張りは水漏れがひどく、人造石は汚れやすい。主婦の悩みは尽きなかった。

そんな中、東京の下町で座卓の製造・販売を営んでいた「井上食卓」の創業者・井上登氏は、日本でも生産がさかんになりつつあったステンレスを流し台に使うことを思いつく。錆びず、汚れてもすぐに洗える流し台は大ヒット。同社は「井上工業」へと社名を改めた。

当時は日本各地で建設されていた2DKの団地住宅が「憧れの的」だった時代である。住宅の中心に据えられたダイニングキッチンには、従来の台所のイメージを覆す、モダンで美しいステンレスの流し台が設置されるようになった。

このクリーンなイメージをさらに印象付けるべく、井上氏があやかったのが当時の「巨人打線」だった。折しも'58年に長嶋茂雄が巨人軍に入団。開幕戦から早速3番に座った長嶋だが、彼の後には4番「打撃の神様」川上哲治、5番には前年打点王に輝いた宮本敏雄が控えていた。塁に溜まったランナーを一掃する彼ら3人は「クリーンアップトリオ」として、お茶の間に名を馳せていた。

「クリーンアップ」の語感に清潔さを感じた井上氏はひらめく。「流し台、調理台、ガス台の3点は、台所の『クリーンアップトリオ』である」と。

商品名としては語呂が悪いので、縮めて「クリナップ」とし、早速'61年からステンレス流し台のブランドとして販売。これが人気を博し、その後同社は日本初のシステムキッチンを開発するなど業界をリードする企業へと成長を遂げ、'83年には社名自体を「クリナップ」に変更した。

ちなみに、'87年まで巨人の本拠地だった後楽園球場の外野席には、「クリナップ」のロゴが大きく描かれた看板が掲げられていた。そして、巨人の「クリーンアップトリオ」が大きな当たりを打つたびに、テレビには「クリナップ」のロゴが映し出されたのだった。(嶋)

週刊現代』2016年12月17日号より