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中国の「移民排斥運動」はこんなにヤバい!~トランプどころじゃなかった

日系駐在員も戦々恐々…

世界で、移民を排斥する「トランプ現象」が止まらない。12月4日のオーストリア大統領選では、移民排斥を唱える極右のホーファー自由党党首が敗北したものの、得票率48.32%と、勝利に肉薄して存在感を見せつけた。

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私は9月にオーストリアへ行って、移民排斥運動の現場を見てきたが、あれは単に一過性のブームではなく、この先、一定期間は続く根の深いものだと痛感した。ドイツや東欧諸国などでも同様のことを感じた。

なぜなら国を支配している富裕層は、伝統的価値観を崩す移民を嫌っている。一方、格差拡大で広がる貧困層もまた、職を奪う移民を排斥しようとしているからだ。とにかく、彼らの沸々と沸き上がる「憎悪」は、凄まじかった。

20世紀末の冷戦の崩壊でグローバリズムが加速したが、その結果、各国で伝統的価値観が損なわれ、格差が拡大した。そのため世界的に「反グローバリズム」の大きなうねりが起こっている。

2016年のイギリスのBrexit、アメリカのトランプ大統領当選に続き、4日のオーストリアとイタリアの選挙でも、市民の「怒り」が前面に出た。イタリアのレンツィ首相は辞任を表明し、民族派が勢いを得ている。2017年のEU選挙イヤーは、大荒れの予感である。

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「外地人は北京から出て行け!」

それでは、中国はどうなのかと言えば、あまりニュースになっていないが、やはり同様の現象が起こっている。

11月の中旬に、北京を訪れた時のこと。私は、夕刻に海淀区で、旧知の中国人5人と会食の約束をしていて、少し早めに朝陽区から地下鉄10号線に乗った。私が乗った車両は、空席はなかったが、朝夕のラッシュ時ほどは込み合っていなかった。

途中駅で、6人掛けの中央部分に座っていた男性が下車して、その目の前に立っていた品のいい婦人が、どっこいしょと座ろうとした。その瞬間、数メートル先から汚らしいカバンがビューンと飛んできて、空席を占拠した。婦人が仰天して振り返ると、臭い服を着た若い女性が走り込んで来て、席に座ってしまったのだった。

すると婦人は、いきり立った表情で叫んだ。

「外地人はいますぐ、北京から出て行け!」

私は仰天して見ていたが、さらに驚いたのはその後である。周囲の老若男女たちが口々に、「外地人はいますぐ、北京から出て行け!」と、婦人と同じセリフを口にして、座り込んだ若い女性を罵ったのである。その女性はと言えば、ボサボサの長髪を盾にするようにして、両手を耳に当てて俯いていた。

この話には、まだ続きがある。夕刻に会った5人の中国人は、いずれも名門大学を卒業した北京戸籍の保有者、つまり北京人だった。私が「先ほど地下鉄で見た驚愕話」を開陳すると、この5人は異口同音に、激しい口調で語ったのである。

「地下鉄の乗客たちの言う通りだよ。そんな田舎者の奴らは、早く北京から追い出してしまえばいい」

「田舎者たちを追い出さないから、街は汚いし、人騙しは跋扈するし、治安は悪くなる一方だ」

「本当に、あの農民どもは、見ているだけで腹が立つ」

「あいつらはロクに中国語も話せないくせに、北京に住む資格なんかない」

「そういう田舎者たちがいない時代の北京には、PM2.5の大気汚染もなく、皆が平和に暮らしていた」

私は5人の北京人に、Brexitやトランプ現象についても聞いてみた。すると彼らは大いに賛同し、「移民なんか受け入れる必要はなく、イギリス国民の選択は正しい」「中国にトランプがいたら応援するだろう」などと述べたのだった。

このように、非民主国家である中国には、大統領選挙も国民投票もないけれども、他者を排斥する国民感情は、沸々とたぎっているのである。

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