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リベンジポルノ事件が問いかけるもの~虐待は未来の犯罪を生むのか?
ルポ・三鷹ストーカー殺人【後編】

立川地裁で行われた三鷹ストーカー殺人事件の一審では、被告人の池永チャールズ・トーマスの異常な人格が浮き彫りになった(詳しくは前編中編参照)。

中編で述べたように、弁護士側の心理鑑定によれば、幼少期に受けた過激な虐待が池永の人格に悪影響を及ぼしたとされている。実母による長期間にわたるネグレクト、実父や母親の愛人による度重なる暴力行為が、彼の心をゆがめ、他人の痛みを想像できず、感情の赴くままに暴力をふるう人間をつくりあげたというのである。

〈わからない子〉が増えている

これまで私は未成年が起こした重大事件をいく度も取材してきた。その中には、池永を彷彿させる少年が少なからずいた。不幸な生い立ちによって、正常な思考ができなくなってしまった者だ。

たとえば、2015年に多摩川の河川敷で起きた川崎市中一殺害事件の犯人である少年Aと少年Bがそうだ。2人は池永同様にフィリピン人の母親と日本人の父親との間に生まれ、特にBは幼少期に親から激しい暴力やネグレクトを受けてきた。そんな2人が、もう1人の友人とともに中学1年生の男子を呼び出し、首をカッターナイフで40回以上斬りつけるなどして殺害したのがこの事件だ。

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この裁判における少年A、Bに対する心理鑑定と、池永の裁判におけるそれは非常に似通っていた。たとえば、弁護士側は少年A、Bが親との関係の中で次のような特徴を持つようになったと指摘した。

「想像力、感受性、行動力に乏しく、危機察知・回避能力の低さが目立つ」
 
つまり、他者の気持ちを想像することができず、何か問題に直面した時に上手に解決せずに、感情だけで無理やりその場しのぎの行動を取ろうとするということだ。

虐待と犯罪との結びつきは、統計の上でも明らかになっている。法務省の調べでは、少年院に収容されている少年のうち72.7パーセントが虐待を受けた経験があるとされている。

今年、私は雑誌『潮』で「アナザー・チャイルド」と題した連載をしており、児童自立支援施設、少年院、少年刑務所、医療少年院をそれぞれ取材した。その時に、職員から共通する言葉を聞いた。

「親の虐待など誤った接し方が、子供たちにどういう影響を与えるかはそれぞれです。ただ、ここに来ている少年たちの印象で言えば、〈わからない子〉が多いというのが特徴です。その子が何を考えているかもわからないし、なぜそういう行動に出るかもわからない。しかも全般的にそういうタイプの子が増えているような気がします」

この〈わからない子供〉は、施設や職員によって「極端に未熟な子」「感情のない子」「人とつながれない子」「感情未分化の子」などと呼び方は変わるが、親の誤った養育によって人格がゆがんで育ったという点で一致する。

では、そうした少年たちの具体的な特色はどうなのか。もっとも多かったのが次だ。

「他人の感情を考えられないロボットのような性格」

「その場かぎりの先を考えない行動」

「コミュニケーション能力の欠如と、それによる感情の爆発」

「ねじれた愛情や倫理観」

他人の気持ちを考えられず、人間関係がうまくいかないいらだちを募らせ、よじれた思考で感情に任せて何かをする。それが犯罪につながることがあるのだ。まさに池永と一致するところだろう。

(誤解がないようにしていただきたいのは、すべての被虐待の人間がそうなるわけではないという点だ。詳しくは中編参照)