防衛・安全保障

日本政府が伝えない南スーダン「国連PKO代表」不在の異常事態

自衛隊は、本当に無事でいられるのか?
半田 滋 プロフィール

ロイ代表より先に更迭されたオンディエキ軍司令官は、7月に起きた武力衝突で、指導力の欠如、準備不足、指揮命令の混乱などの責任を問われた。国連の報告書によると、ジュバの政府軍と反政府勢力の間で武力衝突が発生した際、避難民が生活するUNMISSの保護施設も襲撃を受け、7月の3日間で20人以上の避難民を含めて73人が亡くなった。

報告書は「(オンディエキ軍司令官ら)幹部の指導力不足により、無秩序で非効果的な対応となった。予兆があったのに、十分な警戒態勢もとらなかった」と指摘。政府軍兵士がホテル滞在者らに残虐行為をした事件についても、報告書は「政府軍兵士が略奪を始めた際、市民がUNMISSに通報したにもかかわらず、複数の部隊が出動要請を拒絶して市民らが殺人や威嚇、性的暴力などの重大な人権侵害にさらされた」としている。

南スーダンの政府軍【PHOTO】gettyimages

要するにUNMISSの軍事部門は武力衝突の予兆を察知しながら、何の準備もせず、市民に被害が及んでいるのに見て見ぬをふりを決め込んだというのである。

 

ケニア政府も撤退を決めた「危険地帯」

誤解があると困るのであえて書くが、自衛隊は施設部隊であり、治安維持を担う歩兵部隊ではないので、出動要請そのものがなかった。自衛隊は活動を休止し、宿営地に避難していた。それにしても軍事部門はUNMISSの主目的である「文民保護」をあえて無視しているのだろうか、それとも任務遂行のための能力に欠けているのだろうか。

問題はオンディエキ軍司令官の更迭を受けて、ケニア政府がUNMISSに派遣していた1000人の歩兵部隊を撤収させることを決め、 近く全員が南スーダンから消えることにある。ケニア軍が治安維持を担っていたのは北部のワウ、アウェイル、カジョクの三都市でいずれも州都にあたる。

ワウでは中国の工兵部隊がケニア軍に守られて道路補修を続けており、さぞかし心細い思いをしているに違いない。UNMISSはジュバを守る歩兵部隊を削って三都市に移動させ、治安維持を担わせる方針と伝えられる。
 
「ケニア軍が撤収するとなると自衛隊の宿営地があるジュバが治安悪化した場合、対応できないのでは、という不安が出てくる」というのは陸上自衛隊幹部。「駆け付け警護」「宿営地の共同防衛」という新任務が追加されたとはいえ、主任務は道路補修などの施設復旧であることに変わりなく、部隊編成もこれまで通りという。銃の扱いが得意な普通科(歩兵)部隊も増員されなかった。 

【PHOTO】gettyimages

治安状況を安定させようと、国連安全保障理事会は8月12日、ルワンダ、ケニア、エチオピアの近隣3カ国で構成される4000人の「地域防護部隊」の追加派遣を決めた。当初は「介入軍」とみなして反対していた南スーダン政府も受け入れを閣議決定している。

ところが、こちらもケニアが不参加を表明したことで4000人のやり繰りが暗礁に乗り上げ、地域防護部隊は現状では一人も派遣されていない。
 
UNMISS代表と軍司令官の不在、ケニアの撤収、追加部隊の着任遅れという三重苦の中で、日本政府は撤収するどころか、逆に武器使用の範囲を拡大させる新任務を自衛隊に命じたのである。