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国際・外交 人口・少子高齢化

トランプ政権誕生という「逆説的外圧」は日本を変える大チャンスだ

菅直人元首相が語る

アメリカにトランプ政権が誕生する。当然、日本にもさまざまな影響がある。どの株を買えば儲かるのか、ドルを買うべきか売るべきかなど、週刊誌もにぎやかだ。

その一方、排外主義的な人物が当選したことを憂いている人も多い。そうかと思うとリベラル派のなかには、これで沖縄から米軍が出ていくのではないかと期待する人もいる。

菅直人元首相は米国大統領選について予備選の段階から、節目ごとに感想や分析をブログに書いていた。その政治的立場は、トランプとは正反対のはずなので、さぞかし嘆いているのかと思って話してみると、そうではなかった。

トランプ政権誕生は、日本にとって「逆説的外圧」であり、日本を変えるチャンスだと言う。その真意は? 11月22日に議員会館の事務所で聞いた。

(聞き手・構成:中川右介)

パックス・アメリカーナの終焉

トランプ次期大統領の基本的考え方である「アメリカン・ファースト」は、アメリカが世界の秩序に責任は持てない、もう自分の国のことを最優先にしよう、という考え方です。TPPとか自由貿易に反対とか慎重という以前の問題として、「パックス・アメリカーナの終焉」です。

1945年に第二次世界大戦が終わってからの世界は、経済大国であり軍事大国であるアメリカが世界のリーダーとして、世界秩序のかなりの部分を形作ってきました。

冷戦時代は、片方にはソ連という存在もあったけれど、それもなくなり、ますますアメリカの役割は大きくなった。だけど、同時に行き詰まってもいたわけで、不満をいだいてる人が多く、それが顕在化したのが、今回の大統領選挙でしたね。

トランプ氏は、安全保障についても、自分の国の防衛はするけれど、直接関係のない日本や韓国のことまでアメリカがカネを出してまで守れない、もう面倒を見きれないと言っていて、選挙中には、北朝鮮がそんなに心配なら自分で核武装しろというようなことまで言っていました。

アメリカの中には、常に自分の国のことだけを考えようという流れ、いわゆる「モンロー主義」が根強くあり、今回は、その流れがトランプ氏という存在によって鮮明になりました。

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トランプ氏としては、経済交渉についても、自分に有利な交渉をすればいいのであって、世界の秩序を守ることは二の次になる。だから、アメリカの利益にならないのなら移民を追い出せとまで言い出し、それが支持されて、当選した。

そういう新しい世界のなかで、日本はこれからどうするのか。トランプ新大統領とどう付き合うか。

 

日本が国際的協調のなかで生きていかなければならないことは大前提なんだけど、最近考えているのは、エネルギーと食糧を自給できる国を目指すべきだということなんです。

自給できるようになるってことは、日本の外交における自由度が増すことを意味します。

人口、エネルギー、食糧の3つの視点

いまは、食糧もかなり輸入に頼っている部分がありますが、なによりもエネルギーについては、日本は石油を持たない国だから、自給できないというのが大前提でした。

その大前提のもとで、外交も安全保障も通商も何もかも発想してきたわけです。

原発を推進してきたのも、日本には石油がないからというのが最大の理由でした。

1970年代に石油ショックがあって、石油が入ってこなくなったら、発電ができなくなる、これは大変だとなって、原発がどんどん作られるようになり、国民も、石油がないんだから危険かもしれないけど原発しかないなと、思ってきた。

「人類の歴史は戦争の歴史だ」と、よく言われますが、その戦争の理由の大半は、食糧とエネルギーをめぐる争いなんです。

領土拡張を求めるのはなぜか、植民地を作ったのはなぜか。その理由は、突き詰めれば、食糧とエネルギー資源がほしいからでした。増える人口を食わせるためと言ってもいい。

太平洋戦争にしたって、石油を持たない日本が、石油を止められたら戦えなくなるので、まだ石油の備蓄があるうちにと真珠湾攻撃をしたという一面もあります。

中国、満州へ出ていったのも、突き詰めれば、人口が増えて食糧がなくなりそうなので、その解決策でした。

このように日本の現代史をみても、戦争の理由はエネルギーと食糧です。つまりは、世界の戦争、紛争の問題の大半は、人口、食糧、エネルギー、この3つが理由なんです。