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インドへの原発輸出は、「天声人語」が言うほど危険なことなのか?

すっぽり抜け落ちたインドの「事情」

インドの原発建設を拒むもの

巷でほとんど話題にならない「日印原子力協定」、いや、あまりにも間違った報道の多い「日印原子力協定」について、一言、物申したい。

日本とインドは、11月11日、原子力協定に署名した。原子力協定というのは、原子力関連技術や機器、核燃料の輸出入の際、それが軍事目的に転用されないよう定められた法的枠組みのことだ。

日本は原子力協定を、アメリカ、カナダ、EU、オーストラリア、中国など、多くの国と結んでおり、その下で、技術や燃料などを売ったり買ったりしながら、原子力を平和的に利用してきた。これと同じことをインドともしようというのが、今回の「日印原子力協定」だ。

インドでは、今ある原発はほとんどが自国製の小型原子炉(重水炉)なので、電気が圧倒的に不足している。その他の発電施設は石炭火力だから、多くの町で大気汚染が非常に深刻だ。しかもこの国には、まだ電気のない生活をしている人が3億人もいるという。

だから、原発は一基でも多く建てたい。そのために日本などの先進国から高性能の大型原子炉(軽水炉)を輸入したい。昨年12月の日印会談でも、モディ首相は、「原子力技術を持つあらゆる国と協力を深めたい」と言っている。

インドはすでにアメリカ、ロシア、フランスなどとは原子力協定を結んでいる。フランスの会社と共同で原発を造る話は、2009年に基本合意しているが、まだ建設は着手されていない。アメリカも商談はあるものの、正式にまとまってはいない。

大きな障害は、2010年にインドが作った損害賠償に関する法律だ。原発事故の場合、運転事業者だけではなく、外国の原発メーカーにも賠償責任を負わせるという規則が、外国メーカーの進出に二の足を踏ませている。

そもそも原発の輸出は、原理的に、原子炉や核燃料が核兵器の製造に繋がる可能性があるということで、他の商品とは違い、あらゆる意味でハードルが高く設定されている。

そして、アメリカやフランスや日本は、その厳しい国際ルールをきっちり守ってやっているので、どのみち時間がかかる。原子力協定は平和利用という法的枠組みを定めているだけなので、それを結んだからといって、商談がさっさと進むわけでは決してない。

とはいえ、インドは現在21基ある原発を、2032年までに10倍以上に増やしたい意向で、日本の技術にも大いなる期待をかけている。日本のメーカーはフランスやアメリカよりは出遅れたが、今回の原子力協定が批准されれば、もちろん商談は始められる。

だからといって、ポンとまるごと原発を輸出することにはならないだろうが、しかし、たとえば他の国が受注した原発の一部に日本の製品が必要となれば、その輸出が可能になる。そういう意味で、日本にもチャンスが回ってくる。

 
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