なぜSF作家・藤井太洋はエンジニアをやめて小説家に転身したのか?

自分の人生を変えた本
藤井 太洋 プロフィール

ネット上に誰に読まれるとも知れず載せ続けていたものが話題になり、電子書籍となり、映画化もされる。ウィアー自身がそうだったように、外からのコンタクトで、ワトニーが力強く変わっていく場面は感動します。

今回挙げた本のほとんどが学生時代に読みましたが、8位に挙げたフレデリック・フォーサイスの『ジャッカルの日』は中学時代、母親の本棚にあった本です。

序文で、自分の本が日本で受け入れられるか危惧している、といっているんですが、スリラーとしては今でも一級品。フランスの大統領だったド・ゴール暗殺計画について書かれていて、誰もが歴史から結果は知っているのに、最後までスリリングなんですよ。

9位の『ジュラシック・パーク』は可能かもしれないと思わせる書きぶりとアイデアがすごい。恐竜の血を吸った昆虫のDNAから、恐竜を複製するというストーリーは、ただ面白いだけでなく、行き過ぎた科学への警鐘を含んでいます。

私もいつかこのテンプレートを超えるもの、人と科学の未来を描きたいと思っています。

(構成/朝山実)

 

藤井太洋さんのベスト10冊

第1位『利己的な遺伝子
リチャード・ドーキンス著 日高敏隆ほか訳 紀伊國屋書店 2800円
自らのコピーを増やそうとする「遺伝子の利己性」に着目。人類の進化の謎を解き明かしていく世界的ロングセラー

第2位『未来の二つの顔
ジェイムズ・P・ホーガン著 山高昭訳 創元SF文庫 1000円
安全で完全なものを求め「自己保存」機能を付与された人工知能が、科学者の思惑を超えて動き出す近未来SF

第3位『はてしない物語』上・下
ミヒャエル・エンデ著 上田真而子・佐藤真理子訳 岩波少年文庫 上760円、下840円
「大学時代、今の妻が持っていた本。残念なのは、主人公と同じ年齢の時に、同じようにこの本を読めなかったこと」

第4位『火星の人』上・下
アンディ・ウィアー著 小野田和子訳 ハヤカワ文庫 各640円
事故死と思われた一人の火星探査船クルーによる、未来のロビンソン・クルーソー物語

第5位『人間の土地
サン=テグジュペリ著 堀口大學訳 新潮文庫 550円
「人が自然に向き合っていく姿勢として共感できる。人間賛歌の大好きな作品です」

第6位『戦闘妖精・雪風〈改〉
神林長平著 ハヤカワ文庫 740円
「異次元の敵、機械、人間の絶妙な関係と共に近未来の戦争を描いた日本SFの金字塔」

第7位『百億の星と千億の生命
カール・セーガン著 滋賀陽子・松田良一訳 新潮文庫 入手は古書のみ
「人は常に自身のことを知ろうとして知力を尽くしてきた。その歩みが書かれている」

第8位『ジャッカルの日
フレデリック・フォーサイス著 篠原慎訳 角川文庫 840円
大統領暗殺を企てる謎の暗殺者「ジャッカル」と仏警察との攻防戦を描くスリラー小説

第9位『ジュラシック・パーク』上・下
マイクル・クライトン著 酒井昭伸訳 ハヤカワ文庫 各900円
バイオ複製された恐竜たちがコントロールできなくなる。サスペンス・パニックSF

第10位『ねじまき少女』上・下
パオロ・バチガルピ著 田中一江・金子浩 ハヤカワ文庫 各840円
「エネルギー問題、遺伝子組み換え等を結束した現代SF。ベンチマークとなる作品です」

週刊現代』2016年12月10日号より