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「神ってる」流行語大賞受賞に違和感が噴出するワケ

皆が納得する言葉はもう生まれない
さやわか プロフィール

たしかに流行はしたけど…

同じことは「斎藤さんだぞ」「PPAP」のような語についても言える。

もともとお笑い芸人のギャグは毎年のようにノミネートされていて、過去の受賞語を見ると「フォーー!」(2005年)「グ~!」(2008年)「ラブ注入」(2011年)「ワイルドだろぉ」(2012年)「安心して下さい、穿いてますよ。」(2015年)など、懐かしさの漂うギャグが並んでいる。

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これらが「流行」したのは間違いないし、受賞した芸人は一発屋になるというジンクスまであるという。

しかし、それならなおさら、単なる「流行」に過ぎないということになるだろう。「軽妙に世相を衝いた表現とニュアンスをもって」いるかどうかなど関係なく、その年にウケていたギャグを何となく受賞させているだけではないのか。

「SMAP解散」や「センテンススプリング」にしたって、芸能界の有事ではあるにせよ、どこが世相を衝いているというのか。

「こんな企画はお遊びだから放っておけばいい」という人もいるかもしれないが、筆者はそうは思わない。時代の空気を記録にとどめることには、十分に文化史的な価値があるからだ。しかし、そのわりにユーキャンの「新語・流行語」の定義や選考基準はあいまいすぎる。

ずっと迷走していた

とはいえ、実のところ「新語・流行語大賞」がおかしくなったのは近年ではない。昔からそうだったとも言えるのだ。

 

たとえば1984年の第1回では所ジョージの「す・ご・い・で・す・ネッ」というセリフや、ドラマ「スチュワーデス物語」の「教官!」というセリフが「流行語部門・大衆賞」になっている。つまり、第1回からちまたで流行しただけの言葉が受賞しているわけだ。

ただ、ここで注目すべきなのは、当時は「新語」と「流行語」が区別されていたという事実だ。この時はまだ「流行語部門」のほうは単なる「流行りの言葉」でよく、「新語」のほうは当時の世相を反映した言葉を選ぼうという方針があったのだ。

第一回の「新語」で金賞になったのは大ヒットしたNHKの朝ドラ「おしん」にハマる日本人を評した「オシンドローム」という言葉だ。たしかに時代性を捉えた言葉になっているし、ドラマのタイトルそのままでもない。

しかし、こうした明確な方針が感じられるのは、最初だけである。

第2回の「流行語部門・大衆賞」となった「おニャン子」がアイドルグループやテレビ番組名に由来するのはギリギリ許せるとしても、第3回になると「マンガ日本経済入門」など、どう考えてもベストセラーの書名でしかないものが「流行語」として受賞している。たったの3回目で、もうヒット番付と区別が付かなくなっていくのだ。

しかも、選定基準は時代を追えば追うほど混乱していく。たとえば1992年の新語部門・銀賞は「ひとめぼれ」。新しいブランド米の開発にまつわる言葉だから世相を反映しているとは言える。

だが、ヒット商品の名前なら「流行語」のほうがふさわしいのではないか? また1993年、第10回の流行語部門・金賞となったのは「規制緩和」だ。こちらは世相を感じさせる言葉だから「新語」のほうに入れるべきではないのか?