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流行語大賞に何が選ばれようと、今年の世相を表す言葉は断固コレだ!

ヒント:価値が大暴落したもの

「現象」を指すだけの日本の流行語

この原稿は、今年の「新語・流行語大賞」が発表される直前に書いている。ノミネートされた30語は手元にあるが、大賞が何になるのかはまだ知らない。

けれども、どうせパッとしないものになるだろう。最近の流行語大賞は、どうにもさえない。「えー、これが大賞?」「知らねーよ、こんな言葉」という突っ込みまで含めて、年末恒例の行事になっているかのようだ。

たとえば昨年の大賞を獲得した2つの言葉を、すぐに言える人がいるだろうか?(「トリプルスリー」と「爆買い」)

今年ノミネートされている30語のラインアップを見ても、なんだか釈然としない。

「新語・流行語大賞」の公式サイトによれば、この賞の趣旨は〈1年の間に発生したさまざまな「ことば」のなかで、軽妙に世相を衝いた表現とニュアンスをもって、広く大衆の目・口・耳をにぎわせた新語・流行語を選ぶ〉というものだ。

しかしノミネートされた30語に、そんな高い志は感じられない。

「ユーキャン新語・流行語大賞」公式サイトより

目立つのは、話題になった商品やコンテンツそのものの言葉(「ポケモンGO」「シン・ゴジラ」「君の名は。」「おそ松さん」など)。そして、ニュースのトピックそのままの言葉(「EU離脱」「SMAP解散」「トランプ現象」「パナマ文書」など)。これらがあまりに多すぎる。

〈軽妙に世相を衝いた表現とニュアンス〉などはほとんど感じられず、この1年間に起きた「現象」をただ指しているものが多い。これでは「新語・流行語大賞」ではなく、せいぜい「今年よく見た・聞いた言葉大賞」だ。

 

この賞も昔はこうではなかった。1984年に創設された直後に受賞した言葉を見ると、今とは審査のセンスが違うのではないかと思える。

たとえば第1回の「流行語部門」(当時は「新語部門」と「流行語部門」に分かれていた)の金賞は、「まるきん まるび(○金 ○貧)」だ。イラストレーターの渡辺和博が、現代人のライフスタイルを金持ちと貧乏人の両極端に分けて描いたベストセラー『金魂巻(きんこんかん)』で流行させた言葉で、観察眼と批評精神にあふれている。

翌1985年の「新語部門」の金賞は、なんと「分衆」。公式サイトの解説には〈経済的絶頂期目前の日本社会の自信を表した新語。日本人の価値感は多様化・個性化・分散化してきたとし、従来の均質的な“大衆”ではなく“分衆”が生まれたとした〉とある。ちょっとカタイとも思えるが、時代と真正面から向き合っている感はたっぷりある。

これらに比べると、今年のノミネート語はどうか。

「神ってる」は広島東洋カープの25年ぶりのリーグ優勝を象徴する言葉だし、オリジナリティーにも富んでいるから、大賞の候補にあがってくるかに思える。

だが残念ながら、野球界にほぼ限定された言葉だという印象はぬぐえない。「神ってる」という現象と表現が社会一般に広がったようには思えず、そのため今ひとつパンチに欠ける。

「ゲス不倫」には、言葉としてのある種の面白さはある。

『週刊文春』が今年、次々に報じた有名人の不倫騒動の最初が、バンド「ゲスの極み乙女。」の川谷絵音とタレントのベッキーの騒ぎだったから、「ゲス」が頭についている。これが「人として最低」という意味の「下衆」と重なり、ダブルミーニングのようになっている。大賞候補として事前の人気も高いようだ。

けれども、こちらもやはり広がりには欠ける。個人のスキャンダルから生まれたネガティブな造語だから、口にする側の品性まで落とすような意味合いと語感もある。今年の空気を表した言葉と呼ぶのは、ちょっとつらい。

今年の世相をまさに言い当てている「本当の新語・流行語」が、どこかにないものか……。

それが、あったのだ。