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いきものがかり水野良樹が明かす「曲作りの原点」

名曲「YELL」に込めた思い
伊藤 達也

どうして僕が曲を書くのか

水野 戸谷さんの本のなかの「YELL」についての分析で、特に自分の中で引っかかったのが、「星の友情」という言葉です。

戸谷 「星の友情」とは、ドイツの哲学者であるニーチェの言葉です。

水野 『Jポップで考える哲学』では、「星の友情」についてこんなふうに書かれていましたよね。

双子のような2つの彗星があったとして、同じ軌道をともに描いてきたんだけれど、何かの拍子で別々の方向に進んでしまう。

それは空間的にはたしかに別れなんだけれど、しかし、2つの星がそれぞれ孤独な道を歩むところには共感がある――。そこには「星の友情」が生まれているんだと。

戸谷 はい。ニーチェは「孤独な道を歩む」ことで生まれる友情をたたえています。

水野 この「星の友情」という言葉が、僕が「YELL」の歌詞を書いた時にイメージしたことをまさに言い当てている感じがしました。

この曲の話をする前段として、自分がどうして曲を書くのかという話をさせてください。すごく暗い話ですが、基本的に僕は、人間は孤独だと思っています。言い換えるなら、人間は「分断」のなかにある。

 

僕の考える「分断」には視点が2つあります。1つは生きているものには必ず死が訪れるという時間的な分断。人生という縦軸の時間には始まりと終わりがあって、自分が生きている限り死からは逃れられない。そんな、いわば「縦軸の分断」です。

もう1つが、「横軸の分断」です。家族や友人は空間上では一緒にいるけれど、すべての気持ち、感情を一体化はできないですよね。別々の存在だと分かりきっているはずなのに、でも、分かりあえないことをどうしようもなく寂しいと感じてしまう。

そんな「分断」、つまり人間は孤独なんだという認識から、僕の曲作りはスタートしています。孤独を意識するからこそ、ポップスという多くの人が触れるものに興味があるんです。

Photo by Yuki Matsui

戸谷 なるほど。「YELL」は卒業ソングだと考えていたんですが、やはり別れをイメージして書かれたのですか?

水野 最初はたんに「合唱曲」として制作をはじめていて、かならずしも卒業をテーマにしたわけではないんです。でも、やはり卒業のイメージはありましたね。中学生が歌うことを想定していたので、自分が10代だった頃を思い出していました。

14歳や15歳だと、個人差はありますが、多くの人はまだ別れを経験していないですよね。クラスメートとの関係は永遠のように思っている。けれども、必ず「サヨナラ」は訪れます。

しかも別れは自分が納得したものだけではありません。理不尽な別れ、自分が想像もしなかった遠い別れ、簡単に言えば死がそうですよね。そんな別れが訪れるんだよ、と伝えなくてはいけないと思っていました。

そして、そう書いた上で、サヨナラは悲しいだけじゃないよ、それを乗り越えていかないと――乗り越えるという言い方が正しいかはわからないけど、必ず向き合わなければいけないものなのだと。

みんな孤独を抱えながら決断していって、自分の道を選ぶ。そしてその後には、戸谷さんの本の言葉を借りるならば「星の友情」があって、孤独を共感することができるんだよというイメージがあったんです。