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北方領土も対米問題も、日本のマスコミはなぜこうも読み方を誤るのか

大胆に頭を切り替えねば、先は読めない

腰を低く落として考えるべし

日本に関わる国際ニュースが連日、日替わりメニューのように飛び込んでくる。まさに世界は激動している。こんなときこそ腰を低く落として、日本の針路を考えてみよう。

トランプ次期米大統領は11月21日、あらためて環太平洋連携協定(TPP)からの離脱をビデオメッセージで表明した。ビデオとは異例だが、これが今後もトランプ流の声明スタイルになるかもしれない。

 

日本のマスコミは離脱声明に対して、判で押したように「自由貿易体制の転機」とか「保護主義が勢いを増す」と解説した。だが、大げさすぎないか。米国のTPP離脱が自由貿易に打撃なのは間違いないとしても、だからといって「保護主義が勢いを増す」結果になるとは限らない。

なぜかといえば、TPPが発効しなくても現状が続くだけだからだ。TPPは将来の話なのに、それがダメになったからと言って、現状もダメになるわけではない。ごく単純な話である。

あたかも米国離脱が自由貿易体制の崩壊に結びつくかのような解説は大げさであるだけでなく、誤解を広めるだけだ。

ただ、トランプ氏が選挙戦で訴えたように「中国に45%の関税をかける」とか「日本の自動車に38%の関税をかける」というなら、まったく別だ。現状より関税が高くなるので、米中あるいは米日間の貿易は活気を失うだろう。

日本や中国から部品を輸入している米国企業は打撃を被り、日本や中国が米国製品に報復関税をかければ、米国からの輸出も減る。本当にそんな政策を発動するかどうか見極める必要があるが、TPP離脱で保護主義が始まった、とみるのは間違いだ。

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むしろトランプ氏が「2国間の自由貿易協定(FTA)を目指す」と発言している点に注目すべきである。複数国を相手にしたTPPでなく、2国間交渉に狙いを定めたのは、相手が1人のほうが有利と判断したのではないか。いかにもビジネスマンらしい。

それなら、日本は受けて立つべきだ。べつに複数国の協定が自由貿易にプラスで、2国間協定はマイナスという話ではない。複数国協定なら規模が大きくなる分だけメリットも大きくなるが、日米FTAだって世界経済に占める規模は十分に大きい。

日米FTAで関税が下がれば、日米は直ちにメリットを受ける。その後、日米に関係が深い他国も「遅れてはならじ」と関税を下げれば、結果として複数国協定と同じような効果を発揮する。つまり、道筋が異なるだけで結果は同じになる可能性は十分にある。

そもそも日米FTAは初めて出てきた話でもない。私が通商産業省(現・経済産業省)担当の経済記者だった30年以上前に日米FTA構想が語られ始め、その後も浮かんでは消えた。カーター政権で国家安全保障担当補佐官だったブレジンスキー氏はFTAを含めて日米が一体になる「アメリッポン構想」を唱えたこともある。

日本はTPP交渉の経験を踏まえて、米国に対しても「志の高いFTA」を求めていけばいい。

新聞がことさらにTPP失敗のダメージを強調する背景には、官僚たちが日米FTAを敬遠している事情もありそうだ。交渉相手が複数でなく米国だけとなると「押されっ放しになる」と恐れているのだ。それは交渉力の問題である。譲れない部分があるなら、断固として「ノー」と言えばいい。

官僚はたとえば日本の農業団体と米国の間に立って交渉をまとめるとなると、自分たちが背負う荷物が重くなる。そこで相手に「ノー」と言い切る自信がないから「日米FTAなどトンデモナイ」と記者たちを洗脳にかかっているのだ。

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