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金融・投資・マーケット
ゼロからわかる「金利上昇」というリスク 〜いったい何が問題なの?
日銀と財務省が恐れていること

トランプ大統領の誕生で米国の長期金利が急上昇し、日本の金利にも上昇圧力が強まっている。米国はすでに量的緩和策を終了しており、金利が上がるのはそれほど不自然なことではない。

だが、日本はイールドカーブ・コントロールという新しい量的緩和策の導入を決めたばかり。方針を転換したのもつかの間、日銀はやっかいな問題を抱え込んでしまった。

この先、十分に景気が回復しないまま金利だけが上昇した場合、財政など低金利で覆い隠されていた問題が一気に表面化してしまう。

日本では財政問題というと、国債が紙切れになるとか、これとは逆に政府の借金はまったく問題ないといった極端な意見ばかりが目に付く。日本の国債が紙切れになると本気で思っている市場関係者はほとんどいないが、金利上昇を心配する人は多い。

この先、本当に警戒すべきなのは意図せざる金利の上昇リスクである。

一息付いたのもつかの間

「ようやく一息付けると思ったのに」

これが今回の長期金利上昇を受けての黒田総裁以下、日銀幹部の偽らざるホンネだろう。日銀は9月に開催した金融政策決定会合において新しい金融政策の枠組みを決定し、イールドカーブ・コントロールという新しい手法を導入した。

これは量的緩和策の目標を量から金利にシフトし、事実上、追加緩和から手を引くための措置なのだが、日銀の意図が多くの国民に共有されているとは言い難い(それが日銀の意図なのかもしれないが…)。

今回の金利上昇が関係者の肝を冷やしたのは、日銀の意図とは逆に金利の上昇が止められなくなるという、日銀や財務省にとって最悪のシナリオが頭をよぎったからである。

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なぜ金利が上昇すると日銀や財務省にとって不都合な状況となるのだろうか。その理由を知るためには、量的緩和策のメカニズムについて、もう一度整理しておく必要があるだろう。

量的緩和策とは、市場にインフレ期待を生じさせ、実質金利を低下させて設備投資などを促すための施策である。日本では20年にわたって低金利が続き、名目上の金利はこれ以上、下げることができない。

 

名目金利が下がらないなら、市場にインフレ期待を生じさせて実質金利を下げてやればよい(実質金利=名目金利-物価上昇率)。これが量的緩和策の基本的なメカニズムである。

日銀が市場に資金を供給してインフレ期待を生じさせると、通常は金利が急騰して、設備投資などに融資が回らなくなってしまう。そこで日銀が集中して国債を買い入れることで長期金利を低く抑え込む。

インフレ期待と低金利という、通常はなかなか両立しない状況を意図的に作りだすことで、市中のお金が回り出すことを狙ったわけである。