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ドイツの政治家とメディアがトランプ批判をやめられない「お家事情」
岐路に立つEUとメルケル首相

オバマ贔屓のドイツ人

「民主主義は交代によって息づく」と、メルケル首相はオバマ大統領に言った。11月17日、ベルリン。二人並んだ共同記者会見でのことだ。

民主党から共和党への交代が起こったアメリカ。確かに、交代は新風をもたらし、硬直、あるいは、独裁への道を防ぐ手段でもある。

米大統領選挙の“政権交代劇”の後、オバマ氏はお別れツアーでヨーロッパに飛んだ。訪問先は、ギリシャとドイツ。

このベルリン訪問中に、オバマ氏とメルケル氏が演出したシーンは感動的(!)だった。心のこもった抱擁、キス、別れを惜しむメランコリックな眼差し。仲良く見つめ合う二人の脳裏には、世界平和のために手を取り合って歩んだ8年の歳月と、数々の素晴らしい思い出が走馬灯のように蘇っているのか……。

とはいえ、二人がハグしている写真の背景がぼかされ、キラキラ加工になっているのはやりすぎだと思う。あまりにもロマンチックすぎる。まるで写真屋で撮ってもらったわざとらしい結婚写真のよう。

独Bild紙のオンライン版に掲載されたロイターの写真

ドイツ人のオバマ贔屓は相当なものだ。2008年7月、まだ大統領と決まってもいないオバマ氏がベルリンを訪れた時、彼の野外スピーチを聞こうと、20万人の人々が集まった。今では、独米関係はかなり冷え込んでしまったが、オバマ人気だけは変わらない。たぶんオバマ氏は、アメリカでよりドイツでの方が愛されている。ドイツ人がここまでオバマ贔屓になったのは、おそらくメディアの功績も大きいだろう。

そんなわけで、ドイツでは、政治家も評論家も知識人も、米大統領選のあいだ、皆が全面的にオバマの民主党、つまりクリントン候補を応援し続けた。片やトランプ氏は民主主義の敵と位置づけられ、ほとんど異常性格者扱い。知的な人間はクリントン氏を支持しなければならないというのが、ドイツを支配する動かぬ空気となった。

それに抵抗すると、女性蔑視や外国人排斥を擁護する人間とされてしまうので、皆、何も言えない。せいぜい「どちらもひどいね、今回の大統領候補は」程度でお茶を濁すのが関の山だった。

ところが、豈図らんや、民主主義を危機に陥れるはずのトランプ氏が、民主的に当選してしまった。メディアも評論家も知識人も、揃って玉砕である(と私は思ったのだが……)。

 
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