トライアスロン

トライアスロンの現在地〜上田藍選手の大健闘とその賞金額が示すもの

世界のトップ3に入っても…

プロスポーツ選手とお金

プロスポーツアスリートにとって、獲得賞金とは単なる金額ではなく、戦ってきた証である。だから、今年いくら獲得したかというのは周りも選手自身も気になるところで、金銭の多寡ではなく、自らが活躍した象徴となる。

ただ、競技によって賞金額は大きく異なってくるので、たとえばプロゴルファーが1千万円獲得するのと、マイナースポーツの選手が1千万円獲得するのとでは、その価値は等しくない。

そんな中で、今シーズン、トライアスロンの上田藍選手が推定獲得賞金で日本人トライアスリートとして初めて1千万円を超えた。これはこの業界において素晴らしいことで、彼女のように世界で活躍すれば十分稼げることを証明してくれたと言えよう。

ITU世界トライアスロンシリーズグランドファイナルで5位入賞し、今季の世界ランキングで3位になった上田選手<右>

プロスポーツの世界では大きく分けて、2つの収入がある。スポンサーやチームなどと契約しお金を受け取るというケース。野球やサッカーのような球技はもちろん、ほとんどのスポーツはこれに属する。

もう一つは、レースや大会で勝ち取った順位に対して賞金を得るというパターン。この場合、チームスポーツと個人スポーツでは大きく異なるし、競技によっては賞金がほとんど出ないこともあるので、その額に差が生まれる。

トライアスロンの賞金は他からみると安く、アイアンマンの世界の頂点を決めるような大会ですら10万ドル(日本円で約1100万円)に満たない。通常のワールドカップの優勝賞金は7500ドル。

つまり世界クラスの大会で入賞を重ねても、年間総額10万ドルを超えることは難しい。それをクリアできた上田選手がどれだけすごいかが分かる。

ちなみに今年の上田選手のリザルトは以下の通り。

3月12日 ムールラバITUワールドカップ9位  推定約675ドル
4月24日 ITU世界トライアスロンシリーズ(WTS)ケープタウン7位 推定約3400ドル
5月14日ITU世界トライアスロンシリーズ(WTS)横浜3位 推定約8000ドル
6月12日ITU世界トライアスロンシリーズ(WTS)リーズ 8位 推定約2800ドル
7月2日ITU世界トライアスロンシリーズ(WTS)ストックホルム5位 推定約4900ドル
7月16日ITU世界トライアスロンシリーズ(WTS)ハンブルグ7位 推定約3400ドル
9月17日ITU世界トライアスロンシリーズ(WTS)グランドファイナル・コスメル5位 推定約9800ドル
9月17日ITU世界トライアスロンシリーズ年間ランキング(Bonus Pool)3位 推定約3万8000ドル
10月22日トンヨンITUワールドカップ2位 推定約6000ドル
10月29日宮崎ITUワールドカップ 1位 推定約7500ドル

今季、上田選手が残した功績

これは下記のITUのHPで照合し割り出したものだが、ほぼ現実的な数字だと思われる。そしてこれはあくまでITUの Prize Moneyのみ。それでも推定で8万4475ドルだ。ITU主催の大会以外にも国内外のレースでの賞金を加算していくとおそらく1000万円を超える。

WTS(World Triathlon Series)という世界最高峰シリーズですら、この程度の賞金額であるということを考えると、年間に10万ドルを超えることがいかに難しいのかが分かる。そして彼女の安定した強さが改めて印象的付けられるだろう。

 

逆に言えば、これだけコンスタントに結果を出し、年間ランキング3位という素晴らしい成績を残しながらも、リオネジャネイロオリンピックでは39位。彼女にとって惨敗ともいえる結果に終わったのは本当に残念だ。4年に1度の舞台で戦う難しさを、彼女の成績が表しているとも言える。

もちろんこれで終わったわけではなく、上田選手の視線はすでに4年後の東京オリンピックに向いている。

「リオで悔し涙を流し、コスメルでは(年間ランキング3位で)表彰台に上った瞬間に嬉し涙がでてきました。コスメル大会からは8週間で6レース、年間を通じては17レースに参戦しました。“私はトライアスロンが本当に好きなんだな”と思います。この気持ちを持続させ、東京に向けて突き進んでいきたいです」とは彼女のコメント。

そんな上田選手の来シーズン以降に、さらには2020年が楽しみだ。今シーズン、彼女は日本人でもコンスタントに世界と戦えるんだという概念を、他の選手や関係者に植え付けてくれた。この手応えや自信を日本チームで共有し、日本勢の今後に大いに期待したい。

それにしても、世界でトップ3に入る選手が年間賞金総額1000万円超とは……。スポーツ界でのポジションを表している数字に、トライアスロンに関わる者としては残念な感じ。こればかりは選手の頑張り以上に関係者の皆様に頑張ってもらいましょうか!?

>>参考資料 ITU