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大統領選 アメリカ
「トランプ大統領」を渇望したアメリカ国民の“単細胞パワー”
そしてクリントンは引きずりおろされた

理屈じゃない、ノリだ

「今夜は素晴らしい夜になった。ありがとう。私は、この国を、愛している」

トランプ氏が勝利宣言をこう言って締めくくると、どこからともなく声が上がり、やがて会場は大歓声に包まれた。

U・S・A! U・S・A! U・S・A!

トランプ陣営公式の赤い帽子をかぶり、白人男性たちが拳を振り上げて絶叫する――「ハリウッド映画の一幕」と言われても、違和感のない光景である。まるで、突如侵略してきた宇宙人の軍団を、一致団結してやっつけた後のようだ。

なぜアメリカ国民は、「コイツら、バカじゃないの」と思われかねない勢いでトランプ氏に熱狂するのか。

日本にも、小泉純一郎元総理、橋下徹前大阪市長、小池百合子東京都知事など、有権者の熱狂的支持を受けた政治家はいる。だが、政治家の演説で「ニッポン!」とか「バンザイ!」といった大歓声が巻き起こることは、まずありえない。

実は、日本人の目が届かないところで、トランプ旋風は着実に勢いを増していた。トランプ氏の勝利は偶然ではなく、必然だったのだ。

 

今回の選挙戦で、ヒラリー陣営の選挙運動に参加した、明治大学の海野素央教授が証言する。

「私は昨年夏から、アイオワ州やニューハンプシャー州の家庭を戸別訪問で回りました。当時はまだ、アメリカでも日本でも、マスコミはトランプ氏を完全に泡沫扱いしていた。ですが、現場の感触はまったく違いました。特に、主な支持者である白人無党派層の家庭を回ると、彼らの憤りと熱意が伝わってきたんです。

ある家庭では、白人女性がこう言っていました。『ヒラリーは“私は普通の人たちのために戦う”と言ってるけど、ヒラリー自身“普通の人”じゃないでしょ』。『では、”普通の人”って誰なんですか』と聞くと、彼女は『トランプよ!』と言う。とにかく彼らは、既存の政治家をまったく信用していないのです。

別の男性には、『あんた、女が大統領になってもいいのか?』と聞かれました。最初からこういう人たちが支持していたからこそ、トランプ氏はいくら暴言や失言を重ねても、支持率を落とすことがなかったのだと思います」

アメリカの各メディアが報じた選挙結果の統計データによれば、ヒラリー氏が優勢だったのはニューヨーク、ロサンゼルスなどの大都市圏中心。青(ヒラリー支持)で塗られたのは、ほとんどアメリカ大陸の両端だけだった。各州単位で細かく見ても、州都などの都市部以外はほとんどが赤、つまりトランプ氏支持で埋め尽くされている。

日本人が知っているのは、大都市の事情だけ。アメリカ人の半数以上は、われわれがほとんど行ったこともないような、ド田舎に住んでいるのだ。「トランプ大統領」の誕生を渇望していた彼らの声が、太平洋を越えて届いてくるはずもなかった。

「英語の『トランプ』には『切り札』、そして『頼りになる奴』という意味があります。トランプを支持する人々は、『アメリカがおかしくなったのは、不法移民の入国を許したからだ』『トランプなら、あいつらをやっつけてくれる。頼りになる男なんだ』と考えている。

トランプという名前も、彼に『強いリーダー』というイメージを重ねる人を増やすのに寄与したと思います」(前出・海野氏)

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