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市場に冷や水をかけられたトランプ新大統領の、次の一手を予測する

日本はじっくり構えておけばいい

皮肉な円安・人民元安

勝利に沸くトランプ次期米大統領に最初の冷水を浴びせたのは為替市場だった。ドル高円安である。首尾一貫しない政策が皮肉にも、敵視してきた日本や中国に思わぬ援軍になった形だ。さて、トランプ氏はどう出るか。

大統領選後の金融市場は大きく揺れ動いた。開票日11月9日(日本時間)の大勢判明直後、東京はじめアジアの為替市場では円が買われて、一時は1ドル=101円台のドル安円高をつけた。ところが、翌日は一転してドル高に振れ、その後は109円前後の円安基調が定着しつつある。

株式市場も同様だ。開票日は日経平均株価が大幅下落したが、その後はニューヨーク市場が連日、過去最高値を更新し、つれて東京市場も値を戻している。

当初はだれもが予想外の「トランプ・ショック」に慌てたが、次第に市場は冷静さを取り戻し「これは株もドルも買いか」と思い直した形である。

 

なぜ、ドルが買われたのか。

トランプ氏は減税と財政支出拡大を唱えている。選挙戦で法人税は35%から15%に、個人所得税も39.6%の最高税率を33%に下げると訴えた。公共事業についても道路や橋、トンネルなどインフラ整備に10年間で1兆ドルを支出すると公約した。

さらに米軍も陸海空、海兵隊とも強化拡充する。軍事支出は公共事業と同じく経済を刺激する効果がある。金融市場はこうした減税と財政支出拡大の組み合わせが財政を一段と悪化させると読んで、国債を売り長期金利が上昇した。

もともと12月には連邦準備制度理事会(FRB)が懸案の利上げに踏み切るという見方があったところへ、長期金利の上昇で環境が整い、一段と利上げ観測が強まった。となると「財政拡大+金融引締め」のポリシー・ミックスは一層、典型的な金利上昇を招く。教科書通りである。

投資家からみれば「米国に投資すれば高利回りが得られる」と期待できるので、世界の投資マネーが一斉に米国に向かった。その結果がドル高円安である。為替安になったのは日本だけではない。中国も、だ。人民元は16日に8年3ヵ月ぶりの元安になった。

円安や人民元安は日本や中国の輸出にプラスである。だが、トランプ氏は選挙戦で「中国には45%の関税を課す」とか「日本が米国の牛肉に38%の関税をかけるなら、米国も日本の自動車に38%の関税をかける」などと訴え、両国からの輸出をけん制していた。

日本や中国からの輸出を抑えたいのがトランプ氏の本音なのに、実際に為替市場で起きたのは円安と人民元安であり、むしろ輸出増に追い風になっているのだ。

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