医療・健康・食
できれば避けたい「激痛」の死に方
誰しも安らかに逝きたいものだが…

血管の膜がビリビリと…

「この夏、夫婦で外食をしてから家に帰ってくると、主人が胸を押さえながら『痛い、痛い』と叫びだして、膝から崩れ落ちました。救急車で運ばれて、緊急手術。大動脈解離でした。結局、意識が戻ることもなく、発症してから2日後に帰らぬ人となりました」

こう語るのは、秋津美和子さん(仮名、67歳)。亡くなったご主人は、長年、高血圧だったとはいうが、さしたる病の前兆もなく、あまりに急な最期だったため、いまだに亡くなったことが信じられないという。

大動脈解離は突然死にいたる典型的な病だ。その激しい痛みは経験した人にしかわからないが、想像を絶するものがある。都内大学病院心臓外科医が解説する。

「大動脈とは、心臓から出ている最も太い動脈で、体中に血を送り込むための非常に重要な部分です。

動脈の断面は3層構造になっており、内膜・中膜・外膜と分かれるのですが、内膜に穴が開いて亀裂が入り、そこに血が流れ込んで中膜や外膜をはがしてしまうのが大動脈解離です。最も太くて重要な血管が、ビリビリと引き裂かれると想像してみて下さい。その痛さは激烈なものです」

下のグラフにあるように、日本人の死因はがんについで心臓の病気が多い。なかでも大動脈解離や心筋梗塞は死に直結することが多い病気だ。大動脈解離ほどでなくとも、心臓の周りの血管が詰まる心筋梗塞は相当な痛みを伴う。

「詰まったり破れたりする血管の太さにもよりますが、太い冠状動脈がやられた場合には、耐え難い激痛が走り、意識が遠のくほど。前胸部に痛み、締め付け感が持続します」(前出の心臓外科医)

心疾患と同じく、突然の痛みとともに死が訪れるのが脳血管疾患だ。

「大酒を飲んで帰ってきた父が夜中に、頭を抱えて文字通りのたうちまわった。救急で手術をしましたが、出血をくり返し、1週間後に亡くなった。くも膜下出血でした」(大阪在住の男性、41歳)

くも膜下出血は、脳動脈瘤が破裂し、脳の表面を覆う膜の一つである「くも膜」の下に出血が起きる状態。

「出血で脳内の圧が急激に高まり、痛みが生じる。その激しさは『後頭部を金属バットや鈍器で殴られたよう』とも表現されます」(聖路加国際病院、内山伸氏)

くも膜下出血が発症すると3分の1の患者は死亡する。残りの半分は麻痺や言語障害などなんらかの後遺症が残るので、無事に治癒することが非常に難しい。

脳の血管の異常は、他にも脳と脊髄を結ぶ脳幹に起きる脳幹出血がある。こちらも激しい痛みを伴い、後遺症が残る可能性が高い。

 

腸の中身が逆流して嘔吐

心臓にしても脳にしても、循環器系の病気は非常に激しい痛みと死への恐怖感を伴う反面、死に至ったり意識を失うまでの苦しい時間は比較的短いのが特徴だ。

一方で、日本人の死因の3位である肺炎は、持続的な苦しみに直面することになる。