企業・経営

横行する盗聴、密告、怪文書…だから「合弁会社」はうまくいかない!

ウソみたいな本当の話

うまくいかないのは「人的理由」がほとんど

去る10月31日、日本郵船、商船三井 、川崎汽船の海運大手3社が定期コンテナ船事業を統合する合弁会社を設立すると発表しました。

こうしたニュースを見るたびに、「いつか来た道」を感じざるをえません。過去の事例を見てもこうした大企業同士が作る共同出資会社がうまくいった例がとても少ないからです。

エステーと住友スリーエムの合弁会社はわずか6年で解散していますし、三菱重工業と日立製作所が火力発電システム事業を統合した三菱日立パワーシステムズなど、発足そのものが当初予定より遅れるなど、発足前から親会社同士のゴタゴタが絶えず、今も大きな成果が出たようには見えません。

合弁会社の発足に至る議論は、ごく健全な発想から始まります。規模が利く事業だから規模を大きくしようとか、それぞれの強みと弱みを補完させようといった狙いです。今回の海運大手の合弁でも、船隊規模は世界で第6位になり、年間約1100億円の統合効果を見込んでいるといいますから、それ自体はまったくもって利にかなっています。

ではなぜ、合弁がうまくいかないと考えているのか、説明しましょう。

第1の理由は法人格としての理想と、親会社から合弁会社に出向する個人の理想が大きく食い違っているからです。

 

当然ですが、合弁会社の初期メンバーは、親会社からの出向者で固められます。彼らにとって合弁会社への出向は、ある日突然通達が降ってくるもので、自分の意志と反したものであることも少なくありません。そんな時、当事者たちはなにを考えるでしょうか。

会社としての短期的・中期的・長期的な目標を達成するために、自分が何をするべきか、という発想はほとんど生まれません。彼らの頭の中は、ひたすら「何が何でも成果を認めてもらい親会社へ凱旋復帰してやる」ということが圧倒的なモチベーションになるのです。

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さらに質が悪いのは、合弁会社で新規採用したプロパー人材が、その事業領域における知見や実績がどれだけ豊富でも、出向者達は「俺は親会社から来ているのだから、問答無用で俺に従うように」という姿勢で臨みます。プロパー人材による成果が出そうになっても、それを潰しに係る出向者さえいるのです。

なぜなら親会社に「あの成果はお前がやったんじゃないだろ?」と思われでもすれば、出向者にとっては1ミリの得にもならないどころか、「お前は何をやっていたの?」となってしまいかねないからです。

したがって出向者から見たプロパー人材の理想は、力があり、一所懸命頑張るけれど、結果が出たら「全部出向者のおかげでございます」と献上・演出してくれる人材なのです。プロパー人材がまともであればあるほど、そんなことは馬鹿馬鹿しいと思いますから、定着しません。

結果的に合弁会社には、本社の意向ばかり気にする中途半端な管理職と、レベルの低いプロパー人材ばかりが集まる会社になっていくのがお決まりのパターンなのです。

商談などしていて、「親会社は立派なのに、社員がパッとしない合弁会社だなあ」と思ってしまったことに身に覚えがあったら、この罠に陥っている可能性が高いです。それを念頭に置いて、交渉する相手を見極めたり、あるいはあまり期待しないで深入りしないなど、つきあい方を考えた方が無難でしょう。

こうした個人と会社の意識のズレが起きないようにするためには、合弁などという中途半端な方法ではなく、採算性が悪いと感じている会社がその部門を売却することで、購入した会社の競争力を高める方がむしろ合理的なのです。

所属する人にとっては、お世話になった会社が自分の意志と関係なく変わってしまうことはショッキングなことかもしれませんが、携わる事業そのものは変わらないので、新しい環境にも慣れやすく、会社の目指す方向と個人の目指す方向が一致しやすくなります。