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韓国 エンタメ 不正・事件・犯罪
ソン・ガンホ独占インタビュー「なぜ私は韓国元大統領を演じたか」
映画『弁護人』日本公開記念

巧みな演技力で「天上の俳優」「韓国映画界を背負う名優」とも称されるソン・ガンホ。『殺人の追憶』『グエムル―漢江の怪物』などのヒット作で知られる彼が、映画『弁護人』の日本公開に合わせ、10年ぶりに来日した。

『弁護人』は、2003年に第16代韓国大統領に就任し、08年に自ら命を絶った盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領の政界進出前の弁護士時代がモデルだ。

舞台は、軍事政権下の1980年代の釜山。金儲けがすべてと信じていた弁護士が、社会科学書籍勉強会に参加する学生や社会人19人を政府が不法に逮捕した「釜林(プリム)事件」の弁護を担当し、人権に目覚めていく過程を描いたヒューマンドラマである。

記者会見の一コマ

――今回ソン・ガンホさんにインタビューする前に、質問項目の提出を要求されなかったのが意外でした。韓国の俳優や歌手にインタビューする際、内容確認のために事前に質問状を送ること多いのですが。

「私は事前に質問を見ようとはしません。細かく分析し、準備して答えようとは思わないんです。もし、想定外の質問が飛び出したら、『答えにくいですね』と言えばいい(笑)。事前に質問をチェックする必要なんてありませんよ」

軍部独裁の闇を描いている

――本作のヤン・ウソク監督に「ソン・ガンホさんは最初オファーを断った」と聞きました。

「怖かったのです。韓国の大統領を務め、残念な形で死を遂げた、皆があまりにもよく知っている実在の人物がモデルだったからです。元大統領のご家族も見守っています。誤解を生んだり迷惑をかけたりせずに、彼の人生をうまく演じ切ることができるか……。

でも、妻が『あなたは新人でもアイドルでもなく、失うものも何もない。海千山千を経験した人だから、プレッシャーを感じる必要もないはず』と。そのひと言に背中を押され、出演を決めました」

――ヤン・ウソク監督にとって初めての作品ですが、監督とはどのような話をしましたか

「驚いたことがあります。シナリオをもらい、監督に初めて会ったとき、『この作品の構想が浮かんだのはいつだったのか』と聞いてみました。盧武鉉元大統領が亡くなった後だとしたら、美化する一代記を描くことになると思ったからです。

ところが、監督は『1990年代の初めに弁護士としての盧武鉉に関心を持った』と答えたのです。政治的な意図があったのではなく、弁護士時代の情熱的な姿を描きたいという観点に共感しました」

 

――製作の過程で、釜林事件の関係者から「少しでも嘘を描いたら告訴する」と言われたため、冒頭に「この映画は実際の人物と事件をベースにしたフィクションです」と明記したそうですね。主人公の名前も「盧武鉉」ではなく「ソン・ウソク」です。

「フィクションを前提としているため、主人公の名前を『盧武鉉』にはできませんでした。代わりに象徴的な名前をつけようと、監督の名前ヤン・ウソクと私の名前ソン・ガンホを合わせ、ソン・ウソクというキャラクターが誕生しました」

――韓国公開時には観客動員数1100万人を超える大ヒットとなりました。

「実はもともとはインディペンデント映画として製作される予定だったのです。上映された2013年は、本作にとっては政治的に向かい風でした。朴槿恵大統領は、かつて独裁政治を行っていた朴正煕元大統領の娘ですよね。もちろん、彼らのストーリーそのものではありませんが、広い意味では軍部独裁の闇を描いています。

政府が映画に圧力をかけるようなことは起きませんでした。ただ政府にとって好ましい内容でなかったのは確かでしょう。そのため当初、監督やスタッフは広く投資を集めることは控えていたのです。ところが、私がキャスティングされたために商業映画として製作されることになりました。宣伝も大きくはしませんでしたが、口コミの力で広まりました」

――後半の裁判シーンは、主人公である弁護士が論理的に問いかけても検察や裁判官に理不尽にひっくり返される。そこに理不尽を超えて進んできた80年代の韓国の民主化運動が重ねられていると感じました。迫力ある演技をしていたソン・ガンホさんは、どんな思いで演じていたのでしょうか。

「裁判のシーンは、セットに数日前に入って一人で練習しました。何日も考えているうちに、感情やリズムが身についたのだと思います。あのシーンはテクニックで演じたのではありません。当時を生き抜いた盧武鉉元大統領をはじめ、韓国人の多くが望んでいた民主主義に対する熱い思いが、自然とわき上がってきたのです。

実際に盧武鉉元大統領も無視されたり、法廷でつらい目にあったりしていました。あの時代を生きていたソン・ガンホという役者の気持ちと折り重なる形で、スクリーンに現れていたのだと思います」

 
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