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国際・外交 アメリカ
アメリカ大統領に「できること」は、実は意外に限られている!?
これから世界秩序はどうなるか

エースか、ジョーカーか

ドナルド・トランプ氏が米大統領選で勝利した後、ある有名企業の社長がメールでこんなメッセージを送ってきた。

“アメリカ国民は切り札(トランプ)を引いたわけですね。それはAceなのか、それともJokerなのでしょうか”

なんと言い得て妙の表現なのだろう、と感心した。さらに、トランプ氏の名前「Trump」を英和辞書で引くと、「切り札」のほか、「最後の手段」という意味もある。

トランプ氏の名前自体が今回の大統領選の結果を語っているようである。

TV討論でヒラリー・クリントン氏に3戦全敗し、共和党候補でありながら共和党本体を敵に回し、米国の有力新聞100紙の大半がクリントン氏を支持するという絶体絶命の逆境を跳ね返したトランプ氏。

白人労働者層を中心にした支持者らは、70歳にして「戦士」のメンタリティを持ち続けるトランプ氏がエスタブリシュメント(支配層)を打ち負かし、「偉大なアメリカ」を庶民に取り戻すことに賭けたのだろう。

* * *

今回の大統領選は、筋書きのないテレビのリアリティショーにたとえられた。しかし、リアリティショーには視聴率を稼ぐために欠かせない要素がある。

それは、最も有能な者、八方美人の人気者は勝者にはならないということだ。

トランプ氏はリアリティショーの権化である。かくして、5割の有権者に「この人が大統領になったら恥ずかしい」(昨年12月の米キニピアック大の世論調査)とまで言わしめたトランプ氏が来年1月20日、第45代のアメリカ大統領に就任することになった。

果たして、トランプ氏はエースなのか、ジョーカーなのか。アメリカは、世界は、どうなるのか。

 

世界的な戸惑い

それにしても、と思わざるを得ない。トランプ氏当選に対するアメリカ社会、世界の反応の混沌ぶりである。

トランプ氏当選を受け、日本の新聞では高名な学者が「我々は世界が目の前で崩壊しているのを目撃しているのだ」というような悲観論を語っている。一方で、ニューヨーク株式市場は10日、1万8807.88ドルの市場最高値をつけた。ここまで、政治的な悲観論と経済的な期待感が乖離したことはかってあっただろうか。

\全米各地で起きている反トランプデモ。ニューヨーク、2016年11月13日〔PHOTO〕gettyimages

どこまで根拠があるか疑わしい予測が拡大再生産され、アナウンス効果を伴ってまことしやかに広まっていく。それも、この時代の一つの特徴なのかもしれない。

筆者は、現時点でトランプ政権の具体的な政策について論じてもあまり有効ではないと考える。ただ、トランプ氏の個性や過去の言動、アメリカ大統領がいかなる政策決定プロセスの下にあるのかを知ることによって、一定の方向性は見えてくるとは思う。

以下に説明したい。