選挙

安倍政権はいま、解散総選挙についてこんなことを考えている

【永田町内幕リポート】

解散を後押しする人、止める人

《安倍首相が年内、または年明け早々に解散・総選挙を断行するのではないか》

永田町で流れた、ひところの「解散風」は今ここへきて静まりつつある。しかし、「(解散は)やるやると言ってやるものじゃない。静かになったということは、やらないという意味じゃない」(自民党ベテラン議員)との声もある。

安倍首相によるこの時期の解散の理由は明快だ。「大勝するには絶好のタイミング。大勝によって長期政権を手に入れ、たっぷりと時間を確保した上で安倍首相の悲願である『憲法改正』を成し遂げるため」(首相側近)である。

トランプ氏が新大統領に選ばれるという想定外の出来事もあったいま、現時点での解散の可能性はどのくらいなのか。

まず、官邸。与党の閣僚経験者で官邸にも内通している大物議員は、「安倍首相周辺で早期の解散を一番強く主張しているのは、麻生太郎副総理兼財務相のようだ」として続ける。

「日ロ首脳会談で北方領土問題がある程度前進すれば支持率は上がるし、民進党の執行部内の選挙体制がなっていないことを考えれば、いまがベストタイミングというのが麻生さんの考え」

麻生氏は、今年6月にも参院選に合わせて衆議院を解散し、衆参ダブル選挙を仕掛けるべきだと主張した。

「かつて自分が首相のときに解散のタイミング逃して惨敗し政権から転がり落ちた。そのトラウマや反省から、常にチャンスがあればやるべきという主戦論なのではないか」(同議員)

これに対して、官邸内の慎重論者は菅義偉・官房長官だという。

菅氏に近い自民党議員は「菅さんは、民進党が体たらくでもそれなりに野党共闘が進むと、自民党は30議席や40議席は減らすという見立て」と話す。

この議席減については下村博文幹事長代理も、「野党4党の統一候補が進めば、単純計算で80以上の選挙区で逆転される」と語った。また、夏の参院選で敗れた1人区はいずれもTPPに反対の農業従事者が多い地方や原発政策への批判が強い立地県に、野党統一候補が立ち自民党は破れている。決して楽観視できる選挙状況ではない。

こうしたことから菅氏は、ごく近い周辺に「解散ムード一色を少し弱める」と漏らした。その直後の10月16日の講演では、「解散風は偏西風みたいなもの。偏西風は1年間吹きっぱなし」との慎重論を述べた。

党側では、選挙を仕切る二階俊博幹事長が相変わらずの変幻自在の発言。

【PHOTO】gettyimages

これまで、「選挙の風は、もう吹き始めている」などと発言してきたが、10月末に出演したテレビ番組では、選挙が弱い1、2回生を指し、「我々の立場では、しょっちゅう『解散はあるかも』と言っておかないといけない。わたしの勘では、切迫したことはないんじゃないか」と軌道修正した。首相の決断が、どちらに転んでもいいようにする環境づくりだろう。

日露交渉、公明党

こうした中で、解散を占う大きなポイントは2つ。

1つ目は、なんといっても日ロ首脳会談の中身の見通しだ。前出側近も「日ロ首脳会談の成果、北方領土での歴史的な前進が安倍首相の大きな判断材料でしょう」と話す。

現在、北方領土については「二島返還」など様々な見方が出ているが、自民党幹部は「首相は今回のチャンスに賭けている。プーチンと一対一の関係で話を進めようとしていて、誰が交渉の中身に関わっているのかもトップシークレット。限られた5人ぐらいのメンバーが担当している。プーチン側もごく少数が窓口になっている」と明かした上で、「領土問題がどう進むか。解散は、そこにかかっている」と話す。

2つ目は、公明党の了解だ。安倍首相も、いまや公明党の選挙協力なくして総選挙に勝利できないことは承知している。その公明党幹部が、支持団体の動きも含めて意味深にこう明かした。

「来年夏に都議選を控えているが、この都議選は小池都政下で注目されることもあり、国政選挙並みの戦いとなる。その時期と重なる時期の解散には、党としては負担が多くなるため『ノー』と言わざるをえない。2018年初頭にかけて、公明党の支持団体である創価学会もいろいろ仕事を抱えている。

それらを考えれば、解散のタイミングはこの年末から年始にかけてのワンチャンスしかない。そして、やるなら早い方がいいと考えている。こちらの事情で見るならば、日ロが終わった年内に解散して、選挙は1月、または2月18日投開票という選択もあるんじゃないか」

北方領土交渉次第というところはあるが、公明党の幹部の話を聞くと、俄然解散は現実味を帯びてくる。

なお、「トランプ大統領誕生」という想定外の出来事は、解散の判断にどんな影響を与えるのか。日本の株価が大きく下がることがあれば解散の判断に影響を与えるだろうが、トランプ新大統領が日本の経済にとってマイナスとなる政策を採ったとしても、それが実体経済に反映されるのは早くとも数ヵ月先である。

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むしろ、「あと一年もすれば日本の景気が悪くなっているかもしれない」との判断が働き、解散に踏み切る材料のひとつとなるかもしれない、と考えるべきではないだろうか。