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中国が尖閣諸島を占領する日 〜最悪のシナリオを公開する

突かれる日本の「法的不備」

中国が尖閣諸島を侵攻するときは、200隻以上6000人もの「漁民」を装った準兵士集団が襲ってくる――。そう語るのは、元自衛隊最高幹部の渡部悦和氏。このたび上梓した『米中戦争 そのとき日本は』から日中紛争のシナリオを公開する。

3.11の時、中露は日本への偵察を強めていた

日本人は今、内憂外患が絶えない困難な時代を生きている。

内憂については、我が国は1000年に一度の地殻変動の大激動期にある。阪神・淡路大震災や東日本大震災等を経験してきたし、今後も首都直下地震及び南海トラフ大震災はほぼ確実に発生する。

我々は発生確率の高いこれらの大震災が引き起こす未曾有の危機に備えなければならない。大震災に対処できる強靱な社会、強靱なインフラを構築する必要がある。

外患は、我が国を取り巻く厳しい安全保障環境であり、より具体的には中国、ロシア、北朝鮮の存在だ。言うまでもなく、最大の脅威は中国である。

急激な経済発展を遂げ世界第2位の経済大国に上り詰め、そしてその経済力を背景として世界第2位の軍事費を誇る中国は、富国強軍を選択し、中華民族の偉大なる復興を実現しようとしている。

アジア地域から米国を追い出し、この地域の覇権大国になろうとしている。その表れが、東シナ海や南シナ海における領土要求を絡めた強圧的な態度である。日本に対しては、歴史的な我が国への恨みを背景とする敵対的な政策や言動が目立つ。

とくに尖閣諸島問題に関しては、海警局の公船が領海侵犯を繰り返す一方で、中国軍戦闘機はいつ不測の事態が起こってもおかしくないきわめて危険な行動を繰り返している。

〔PHOTO〕gettyimages

ロシアは、ウラジーミル・プーチン大統領のもとで、強いロシアの復活を目的として急速な軍事力の増強を推進し、クリミア併合やウクライナ東部での軍事力行使、シリアでの乱暴な軍事活動を繰り返してきた。我が国の北方領土の返還要求にも依然として応じていない。

北朝鮮は、金正恩独裁体制のもとで核・弾道ミサイルの開発に狂奔し、日本にとっても無視できない存在になっている。

 

筆者が最も恐れる最悪のシナリオは、同時に生起する複合事態である。

2011年に発生した東日本大震災は複数の事態が同時に生起する複合事態であった。当時の自衛隊は、地震、津波、原子力発電所事故に同時に対処する必要に迫られた上、周辺諸国の情報偵察活動も続けなければならなかった。

多くの日本人は知らない事実だが、当時、自衛隊が大震災対処で忙殺されている間に、その自衛隊の警戒態勢を試すかのように周辺諸国(とくに中国とロシア)が軍事偵察を活発化させた。その姿勢には強い憤りを感じたものだ。しかし、それが我が国周辺の厳しい安全保障環境であると改めて実感したことを思い出す。

筆者が恐れる「同時に生起する複合事態」の一例は2020年に開催される東京オリンピック関連である。この大会に備えてテロやサイバー攻撃への対策が議論されているが、大会直前や開催中の首都直下地震の発生及び対処は考えられているだろうか。

筆者がさらに恐れる同時複合事態は、首都直下地震(または南海トラフ大震災)の発生に連動した日本各地でのテロ活動、もしくは、尖閣諸島など日本領土の一部占領である。

この最悪シナリオは、3・11の大震災の経験に基づく筆者の実感だ。