ライフ 週刊現代
大人気商品のウソ〜魅力的な「薬用石けん」、実は効果ナシ!
欧州では使用禁止!?

薬効成分が、悪そうな見た目のバイ菌を退治して、手がピカピカになる。いかにも効果がありそうなCMで、小さい子を持つ主婦にも人気だった。それなのに、突然「意味がなかった」と言われても。

普通の石けんと効果は同じ

「米国では『アンチバクテリアル・ソープ』と表示された商品が約2100品目あり、石けん市場の40%を占めていました。これらは『抗菌石けん』、つまり日本で言うところの『薬用石けん』です。'90年代以降、米国ではこの石けんは、とても人気のある商品でした。

ところが、いまスーパーにいくと、『アンチバクテリアル』と表示された商品が目に見えて、どんどん少なくなってきています。そのきっかけは、9月2日にFDAが行った発表でした」

そう語るのは、元ハーバード大学研究員でボストン在住の医学博士、内科医・大西睦子氏である。

米国のFDA(食品医薬品局)は、19種類の殺菌成分を含む石けんの販売を1年後に禁止することを決定した。

その理由は以下だ。

 

「通常の石けんとくらべて殺菌作用が優れていると証明できない」

「長期使用で人体に有害となる可能性が否定できない」

19種類のなかでも、もっとも問題視されているのは「トリクロサン」という成分である。

「トリクロサンはもともと農薬として登録され、その後、医療用から一般商品に普及していきました。報道によれば、米国で『アンチバクテリアル』と表示された液体石けんのうち、93%の製品にトリクロサンが含まれているとのことです。

しかし、近年になって、トリクロサンの有効性を検証する様々な研究が行われてきました」(大西氏)

米国疾病対策センターの研究者は、衛生状態の悪いパキスタンの子供たちを、通常の石けんと薬用石けんを使う群に分けて比較する研究を行った。すると、どちらの群でも下痢、肺炎は半減という同じ結果で、大きな差異は認められなかった。

またミシガン大学のアリソン・アイエロ博士らは、'80年から'06年までの27の研究データを解析。その結果、「薬用石けんが、普通の石けんと比べて感染症の予防効果に優れているということはない」と結論付けた。

さらに有効性だけでなく、逆に健康に対してリスクがある可能性も指摘されているという。

「'00年には、英国ニューカッスル大学の研究者から『トリクロサンは皮膚などから体内に吸収される』という報告があり、『トリクロサンを石けんなどに使うのは問題だ』という声が欧米で高まってきたのです。最近では、ホルモンへの影響やアレルギーのリスク、さらにはがんを誘発する可能性があるという研究報告まで出てきています。

一連の研究論文を読むと、この物質が人体に有害である可能性は否定できません。しかも有効性が認められないと示されているわけですから、あえて使う必要がまったくないというFDAの判断は、妥当だと思います」(大西氏)

すでに欧州ではトリクロサンは、'15年6月に使用禁止が決定されている。

米国FDAの発表を受ける形で、9月26日、日本石鹸洗剤工業会など日本の業界団体は、同じくトリクロサン等19種類の殺菌成分を含んだ石けん等に関して、1年以内にこれらの成分を含まない製品に切り替えるよう各メーカーに要請した。

だが、同成分を含み、日本国内で医薬部外品として承認されている薬用石けんはおよそ800品目もある。

「薬用」「抗菌」「殺菌」「消毒」をウリ文句に、大量のテレビCMが流れ、その効果を強調したパッケージでスーパーやドラッグストアにズラリと並んでいる、それは清潔さを求める消費者にとって実に魅力的だった。

Photo by gettyimages
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