野球 週刊現代
日本一早い大予測!プロが分析「ドラフト1位選手、来年はこうなる」
完成度が高い柳、即戦力の濱口

近年稀に見る「投手の当たり年」だった今年のドラフト。各球団が知恵を絞り、将来のエースやレギュラー候補を選抜した。彼らの中で、来季早くも芽を出すのは誰か。スペシャリストたちが分析する。

完成度は柳がピカイチ

「ボールがミットに収まる瞬間、『ズシン』という、まるで鉛玉のような衝撃を感じました。アウトローなんて、ミットが吹っ飛ばされるかと思ったほど。田中君のストレートは、重さで言えば、長年僕が受けてきたアマチュア投手のなかで、一番だと思います」

スポーツライターで、長年全国の注目選手の球を自ら受けて回り、「流しのブルペンキャッチャー」の異名を持つ安倍昌彦氏は、ドラフト直前に田中正義(ソフトバンク1位・創価大)のボールを受けたとき、その威力に驚愕したという。

186㎝の長身から投げ下ろす常時150㌔を超える速球と、直角に落ちるフォークで三振の山を築き、一時は「10球団以上の競合もあり得る逸材」と称された田中。だが、今春に古傷の右肩痛を再発、ようやく実戦に復帰したのは、8月末になってのことだった。

長年、田中に張り付き、創価大とも付き合いの濃い日本ハムのスカウトがネット裏から姿を消し、「一番情報を持っているハムがマークをやめたのは、田中の肩に重大な欠陥があるからではないか」などと、各球団による腹の探りあいが続いた。

しかし、フタを開けてみれば、日ハムも含め、堂々の5球団1位指名。元・巨人チーフスカウトの中村和久氏が言う。

「田中君の場合、肘や肩の張り、右足の状態が万全ではないため、最近は全力投球できていない。まず、ゆっくりと身体を鍛えて、徐々にギアを入れていったほうがいい。

その点、同じように肘の不安を抱えていた日本ハムの有原航平君のように、焦らず調整させるのが良い。幸い、ソフトバンクは先発が充実しているし、ファームの環境も12球団で一番充実しているので、落ち着いてトレーニングできるはず。一軍で田中君の投球を見られるのは、早くて夏以降になると踏んでいます」

田中が万全の態勢を整えるため、ゆっくりとしたスタートを切るとすれば、その間を縫って、最初に一軍のマウンドを踏むのはどの選手か。

現役時代、横浜で通算101勝をあげた評論家の野村弘樹氏が言う。

「最初に出てくるのは、現時点での完成度が一番高い柳裕也(中日1位・明治大)でしょう。田中はコントロールや体力もまだまだ発展途上のイメージですが、柳の場合は、ケガもなく実戦経験も豊富。

今の時点でプロに混じってもやっていけるだけの能力がある。今季、2ケタ勝利のピッチャーがいない中日の厳しい投手事情も相まって、開幕からローテーションの一角を任される可能性もあります」

前出・安倍氏も続ける。

「柳君は、六大学でずっとエースを張ってきただけあり、色々なテクニックを持っている。たとえば、調子が悪く三振を奪えないときでも、ランナーを毎回1人くらい背負いながらも、ゆっくりと大きく曲がるカーブを駆使し、のらりくらりと凡打を打たせて0点で抑えるピッチングができる。

引き出しが多く、大崩れしない。上手くまとめられれば12勝くらいは固い。新人王の筆頭候補です」

では、田中や柳のクジを外したいわゆる「外れ1位」で異例とも言える5球団の指名が集中した、桜美林大学の佐々木千隼はどうか。

同大学の特別コーチとして、佐々木を間近で見てきた野村氏が言う。

「千隼は、田中よりも体がしっかりしていて、故障の不安がありません。なにより、ピッチャーとして一番大事な、ハートの強さを持っている。

桜美林大学も、なかなか点が取れない時期があり、彼が0点、1点に抑えても勝てない試合が少なくなかった、そういう厳しい環境を経験し、我慢強さ、粘り強さも身についたと思います」

10月末に行われた首都大学野球リーグの優勝決定戦でも、強豪の東海大相手に初回に2点を奪われながら、2回から変化球主体の投球にガラリと切り替え、以降の回を0点に抑え完投。落ち着いた対応力を見せつけ、チームを初優勝に導いている。

「ロッテは、14勝の石川歩、10勝の涌井秀章に次ぐ先発の柱がいませんから、早い段階で、千隼にローテーションに入って欲しいはずです。1試合を投げきるスタミナは十分あるので、あとは、1年間戦い抜ける持久力を身につけてくれれば、1年目から一軍で十分にやってくれる。10勝も夢ではないと思いますね」(前出・野村氏)