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能年玲奈が「のん」になって得たものと失ったもの

「ザ芸能界 TVが映さない真実」第5回

能年と事務所、双方の言い分が最も激しくぶつかり合ったのが、「新会社設立」と「改名」についてだった。芸能界のしきたりを破った彼女に、何が待ち受けているのか。当事者が事件の核心を語った。

(*前回「能年玲奈、国民的アイドルはなぜ消えた?」はこちら http://gendai.ismedia.jp/articles/-/50115 連載第1回はこちら http://gendai.ismedia.jp/articles/-/49869

「三毛andカリントウ」

芸能記事には、悪意に満ちた恣意的な噂、あるいは事態を知るはずもない周辺関係者の無責任な証言を元にしたものもある。この連載を始めるときに意識したのは、しっかりとした証言者、資料によるファクト(事実)を積み重ねることだった。

前号では、能年玲奈(のん)の元所属事務所であるレプロエンタテインメントと、彼女の代理人でもある顧問弁護士の双方に初めて話を聞いた。

その目的は「朝ドラ主演女優なのに月5万円の薄給」「振り付け師の洗脳」「事務所からの圧力」「改名」など、一連の騒動を賑わせてきたソープオペラのようなキーワードをはぎ取り、法的争点を明らかにすることだった。

改めて、能年とレプロの契約についておさらいしておく。

 

'11年6月、レプロは能年と3年契約を結んでいる。'14年6月の契約終了後、レプロ側がオプションを利用して2年間契約を延長したが、今年6月にその延長期間も終了した。

前号で報じたように、レプロ側は2年間の延長について、能年との信頼関係を回復させた上で、ビジネスを継続させたいという意向だった。一方、能年側は「何度も『仕事を下さい』という書面を出したが、もらえなかった」と主張している。

レプロ側が態度を硬化させた最大の理由は、弁護士同士での条件交渉が進んでいた'15年1月、能年が無断で「株式会社三毛andカリントウ」という個人事務所を設立したことだった。この会社の登記には、〈タレント、俳優、歌手、演奏、作曲家、作詞家、編曲家の養成およびそのマネージメントに関する業務〉と明記されていたのだ。

レプロは芸能プロダクションの業界団体「日本音楽事業者協会」(音事協)に所属しており、契約締結の際はこの音事協が作成した「専属芸術家統一契約書」を使用している、と主張する。

この統一契約書の第4条(専属芸術家業務)4項では、〈乙(筆者注・タレント)は甲(プロダクション)の承諾を受けることなく、甲以外の第三者から、プロダクション業務の全部又は一部の提供を受けてはならない〉とされている。

これについて、能年の代理人である星野隆宏弁護士はこう答える。

「まず、音事協の統一契約書と実際にのんがレプロと締結した契約書には相違点があり、我々は全てこの実際の契約書に従って行動しています。音事協の書式はこの件とは無関係だと考えているので、それに関する質問は一切お答えできません。

その上でマネジメント業務について、実際の契約書では『個人事務所を作ってはならない』とは明文化されていない。もちろん契約の趣旨は専属契約ですから、個人事務所を作ることは望ましいことではないでしょう。

ただ、のんがやろうとしたのは、レプロとの契約外で、将来的にイラストや写真、キャラクターグッズを販売する窓口とすることだけです。のんにはレプロとの専属契約に違反するような芸能活動をするつもりはなく、現実に契約期間中は全くしていません」

なぜ本名を捨てたのか

しかし、統一契約書の第9条にはこうも規定されている。

〈前4条に定めるもののほか、この契約の存続期間中にプロダクション業務及び芸術家業務により制作された著作物、商品、写真、肖像、筆跡、イラストその他一切の成果物(未編集及び未発表の素材を含む。)に関する著作権法上の一切の権利、商品化権、所有権その他一切の権利は、全て甲(プロダクション)に帰属する〉

「マネジメント業務を目的としていなかった」という主張通りであっても、「三毛andカリントウ」の設立目的はこの条文に抵触するように思える。