不正・事件・犯罪 週刊現代
怪しすぎる「不動産詐欺」〜渋谷の土地取引、消えた6億5000万円
「地面師」という闇の住人

偽のパスポートや印鑑証明を作り、他人に成りすまして土地を売りつける「地面師詐欺」。今回は、実際の取引の関係者たちが続々と口を開いた。誰が本当のワルなのか―怪しすぎる裏社会を覗く。

(前編の「ご用心! 不動産のプロまでダマされる「地面師」たちの手口」はこちらhttps://gendai.ismedia.jp/articles/-/50110

地主が「変死」したケースも

地主に成りすまし、所有者の知らないあいだに土地を売り払って大金を騙し取る地面師詐欺。マンション建設に最適な東京・渋谷区富ヶ谷の住宅用地を買うつもりだった中堅不動産業者のAは昨年9月、6億5000万円を詐取されてしまった。が、近年起こっている地面師詐欺はこれだけではない。

「新橋の6丁目のこの四角い敷地、この一角の所有権が勝手に変更されている可能性が高い」

Aが住宅地図や不動産登記簿を広げて説明してくれた。

「私も似たような被害に遭ったので、いろいろ調べたのですが、この土地は、資産家の地主が亡くなり、'85年に相続され持ち主が変わっている。古いビルの地代だけでは都心の高い固定資産税を払うには苦しかったのでしょう。土地を手放して転売が繰り返された格好になっている。最終的な所有者は大手企業ですが、問題はその間。

相続した所有者が行方不明になっている。誰かが相続人に成りすまして売り払っている可能性が高いのです。現在、警察に情報を提供して調べてもらっていますけど、何度も転売されているので、犯人がどこで成りすましたのか、わからない」

 

結局、10月19日、行方不明になっていた地主女性のものと見られる白骨化した遺体が問題の土地の近くで発見された。

A自身が被害を受けた富ヶ谷の件では、東京神田の諸永総合法律事務所が取引場所となった。

「実は諸永事務所の事務員で元弁護士の吉永精志は、当初富ヶ谷のほかにもいくつかの物件を薦めてきました。別の買い手がついたというので、手を出さなかったけど、その後、調べ直してみたところ、いろいろ出てきた」

Aは次のような別のケースを教えてくれた。

「たとえば渋谷区南平台の土地。そこは'57年から小林商事という会社が所有してきたのですが、ちょうど私たちに話が持ち込まれた時期と同じ昨年8月3日、ジョン・ドゥに所有権が移っている」

ジョン・ドゥは、富ヶ谷の地主、台湾華僑の呉如増の代理人と称して今回の事件に登場した山口芳仁の会社だ。つまり富ヶ谷のときと同じ顔ぶれが、南平台の土地取引に登場している。面積は80坪ほど。坪あたり700万~800万円、6億円ほどの高級住宅用地だという。

「諸永事務所の吉永氏が我々にこの話を持ち込んできたとき、小林商事社長の免許証のコピーをもらいました。で、それをもって小林商事を訪ねてみました。受付で『おたくの社長さんはこの人ですか』と免許証の写真を見せると、『えーっ、ぜんぜん違いますよ』とびっくり仰天していました」

どんな手を使ったのかは不明だが、土地の所有権は小林商事からジョン・ドゥに移転した。その後、転売先になるはずだった不動産会社が不正に気付いたのだ。小林商事は8月27日、東京地裁に所有権移転禁止の仮処分申請をし、ことなきをえた。だが、仮に持ち主の知らないあいだにジョン・ドゥから善意の第三者である別のX社に転売されていたら、どうなっていたか。

小林商事はジョン・ドゥを訴えることができるが、X社に対しては手の打ちようがない。手遅れになると、土地を取り戻せなかったかもしれないのだ。ゾッとする話というほかない。