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ヒットメーカー・松任谷正隆が明かす「僕の音楽人生のすべて」

これからも前だけを見て歩んでいく

松任谷由実「守ってあげたい」、松田聖子「赤いスイートピー」、ゆず「栄光の架橋」など、数々の名曲を手掛けてきた音楽プロデューサーの松任谷正隆氏が自身の音楽人生のすべてを語った書籍『僕の音楽キャリア全部話します』を上梓した。

「これからも前だけを見て歩んでいこうと決めている」という松任谷さんに、本をまとめるきっかけとなったお話や、自身の仕事、音楽観などについてインタビューした。

 

暴露本ではないが、隅々まで書いた

―本書はタイトル通り、松任谷さんの音楽人生のすべてが綴られた1冊です。これまでにご自身でお書きになった本が幾冊もありますが、今回、インタビュー形式を選択なさったのはなぜですか?

実は僕、人にインタビューをしてまとめるという仕事をライフワークにしたいと思っているんです。そのために「インタビュー研究会」なる勉強会を主宰していて、この本を企画したインタビューをしてくれたライターの神舘和典さんもメンバーの一人でした。

ミュージシャンの自伝は世に数多く存在しているけれど、どうせ作るのなら差別化を図りたいと話し合うことから始まりました。つまり本書は、インタビューを通じてどれだけ出来事や心情を掘り下げることができるのかという実験であり、どこまで正直に語ることができるのかという僕自身の挑戦でもあったわけです。

―「こんなことまで話しちゃっていいのかな?」と語り始める箇所もありましたね。

そういう話を盛り込まなくてはつまらないというか、通り一遍なキャリアの話をするだけでは独りよがりな本になってしまいますよね。ただし、これを載せたら社会的に抹殺されるなという話はもちろん外してます(笑)。

端から話せる話だけをしたというのではなく、神舘さんとの親しい関係性の中で話してしまった話をギリギリのところまで残したという点が重要なんです。

そもそもこの本は暴露本ではありません。これはインタビューに答え続けた結果として生まれた感情ですが、僕の音楽人生を通して、読者が「この歌が作られていた頃、自分は……」と人生を振り返ったり、青春時代を懐かしく思い出したりしながら心地よい時間を過ごしていただけたら嬉しいなと思っています。

―松任谷由実さんをはじめ、吉田拓郎さんに山下達郎さん、ハイ・ファイ・セットや矢野顕子さんなど、アレンジャーとして関わり、音楽を通じて結ばれた豪華な方々とのエピソードの数々にもワクワクしました。

今でこそ豪華な顔ぶれといえるのですが、知り合った頃は互いに未来を模索していたというか、暗黒時代だったというか。そんな中で、縁のある人達とは、嗅覚によって引き合ったのだと僕は考えています。この町に行けば楽しいことがありそうだというような。僕に関していえば、嫌いなところには行かなかったのではなく、行けなかったんです。

それが通用したのはラッキーだったと言えるかもしれませんが、自分としてはピンとこない。インタビューを受けながらつくづく思いました。「僕の人生って山がないよな」って(笑)。と言って、運だけでやっていけるほど、人生って甘くはないんですよ。

僕は才能があるのに消えてしまった人も山ほど見てきました。成功する人とそうでない人の違いは、運のあるなしだけではないように思います。成功している人だってアンラッキーな出来事を乗り越えて今がある。

僕にしても、もっとラッキーだったらと、幾度となく悔しい思いをしてきました。そう考えると、成功するしないという以前に、続けるための情熱が必要なんですね。

数々のエピソードを介して、音楽に人生を捧げた人間の熱量の大きさをお伝えしたつもりです。