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夫のひどいイビキは「この重病」のサインです

最悪の場合、死ぬことも…

心臓発作のリスクは2・6倍

「夫のイビキがあまりにひどいので、寝室を別にしていたんです。ある夜、お酒を飲んで帰宅した夫は、そのまま自分の寝室でガーガーとイビキをかいて寝てしまいました。

朝になっても起きてこないので部屋に様子を見に行きました。返事がないので、おかしいなと思って部屋をのぞくと、意識を失っていたのです。慌てて救急車を呼んで病院で処置をしてもらったところ、脳卒中を起こす一歩手前でした。

確かに夫は睡眠時無呼吸症候群の気はありました。でも『所詮はイビキだから』と簡単に考えてしまっていた。こんな重大な病気につながっていたとは思ってもいませんでした」(50代女性)

ひどいイビキを伴う「睡眠時無呼吸症候群」(SAS)は、単なる騒音ではなく重病を伝えるサイン、いわば身体の赤信号でもある。

「SASにより呼吸が止まれば、脳や身体は酸欠状態に陥り、全身に十分な酸素が送られません。そのため睡眠の質が悪化し、昼間に強烈な眠気が起こります。放置しておくと突然死や循環器系の疾患など、命に関わる病気をもたらす」(RESM新横浜院長の白濱龍太郎氏)

現在日本のイビキ人口は2000万人もいるとされ、その内200万人がSASと推計されているが、予備軍まで合わせると数はもっと増える。

もし朝起きたとき、こんな症状があったらSASの可能性があるので、要注意だ。

(1)朝起きたとき頭が痛い。(2)よく眠れた感じがせず、眠りが浅い。(3)喉が痛く、口の渇きがひどい。(4)寝ている途中で目が覚めることが多い。(5)夜中にトイレによく行く。

 

SASで一番恐ろしいのは「突然死」だ。SASの場合、そうでない人と比べて、夜間の心臓発作のリスクが2・6倍にまで跳ね上がるという報告もある。

「私たちが正常な呼吸をしているとき、血中酸素濃度は96%〜100%に保たれています。しかし、睡眠時に頻繁に無呼吸を起こすSASの場合、血中酸素濃度はなんと60%にまで落ち込む。これはいきなり8000mのエベレスト山頂に登ったようなものです。SASの人は、それくらいの低酸素状態が一晩に何十回も起こっているわけですから、当然、突然死の危険性も高まります」(前出の白濱氏)

睡眠時の無呼吸でそのまま死に至ることはなくとも、SASが引き金となり深刻な病気を誘発する可能性がある。

新橋スリープ・メンタルクリニック院長の佐藤幹氏が語る。

「SASにより低酸素状態が慢性的に夜中続くことで、心筋梗塞や脳血管疾患といった動脈硬化性疾患の発症を促進させます。また動脈硬化が基盤にある場合には、呼吸再開時に心臓が頻回に動き、それに伴って不整脈を来すと、急性の心筋梗塞や脳梗塞のリスクが高くなります」

SASは肥満の人に限ったことではない。痩せ形の人でもSASになることがある。東京天使病院睡眠呼吸センター長の高崎雄司氏が語る。

「骨格的に顎が小さい人は、もともと喉が狭いためイビキをかきやすいのです。

また70代以上の高齢者の場合は、加齢に伴い脳から『呼吸をしなさい』という命令が上手くいかず、痩せているにもかかわらず、無呼吸を誘発してしまうケースがある」

男性に多いと思われがちなSASだが、実は女性も少なくない。

「日本人男性の9%、女性の3%がSASと推定されていますが、50歳以上では男女比がほぼ同じになります。理由は閉経による女性ホルモンの減少です。女性ホルモンには、呼吸中枢を刺激する作用がありますが、更年期世代はそれが減少するので、イビキをかきやすくなる」(スリープ&ストレスクリニック院長の林田健一氏)

さらに近年、SASは高血圧などの生活習慣病とも深い関係があることが明らかになってきた。

「SASになると、呼吸が止まったり再開したりを繰り返す無呼吸状態が起こり、血液中の酸素濃度が下がります。また、交感神経が刺激されることによって、本来下がるはずの血圧も同時に上昇します。この状態が続くと動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳卒中の危険性が増す」(東京医科歯科大学・睡眠制御学講座准教授の玉岡明洋氏)

SASの場合、脳卒中のリスクがなんと普通の人の4倍にもなるという。